在日コリアンについてのFAQ
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そもそも民族教育ってどういうものですか。

 まず,民族教育の担い手ですが,公的な機関としては民族学校と,日本学校の民族学級の2つがあります。母国への留学を含めてもいいでしょう。半公的なものとしては,民族団体が実施する啓蒙・親睦・学習をかねた活動をあげられます。そして私的なものとして,家庭教育があります。

 それぞれ分けて,教育の実践内容を解説していきましょう。

 民族学校について話しはじめると長くなりますが(詳しいことはFAQ#35へ),でも事実は非常に単純です。北朝鮮系,韓国系を問わず,カリキュラム的には日本の学校と大差ありません。違いと言えば,授業が基本的に韓朝鮮語でおこなわれていること,そして,歴史教育においてコリアンの歴史(ないし在日コリアンの歴史)に比重が置かれていること,の2点だけです。

 つまり,民族学校における民族教育の骨子は,体系的に,継続して,言語や歴史の教育を受けられるということにあります。

 それに加えて,日本で生活するうえでの難点をサポートする制度がととのっていたり,民族的自尊心を育てるための指導が授業時間内外をとわずに行われます。同胞の友人も自然と多数できる。学校内でイジメの体裁をとった民族差別に会わずにすむ。――言うなれば,ほっといても自然な民族的自尊心を持った人間に育つ,ということです。

 つぎに,日本の学校で細々と行われている民族教育について説明します。在日コリアン生徒の9割ほどが日本の学校に通っていますので,日本の学校でどうやって民族教育を保障するかということこそ,在日韓朝鮮人の民族教育問題であるといっても過言ではありません。

 日本学校における民族教育の担い手の一つである,在朝協(有志日本人教師による活動)での取り組みの中核は,「本名を呼び・名のる運動」です。日本人生徒との人間関係のあり方を変えていくことで,本名を呼び・名乗ることのできる環境を創り出していく。そのプロセスで,民族的自尊心と,差別を克服する力を身につけていこうという運動です。

 それと同時に,韓朝鮮にたいするマイナスのイメージを肯定的にするために,学校が教えないコリアンの歴史についての学習会であるとか,民族文化に親しませるための文化活動(サムルノリなど)も行われることがあります。

 日本学校における民族教育エージェントのもう一つの柱は,「民族学級」です。朝鮮戦争前の武力的な民族学校閉鎖への代償として取り決められた民族学級が11校あり,その他にも大阪市と東大阪市をあわせて60校ほど民族学級が設置されています。

 しかしながら,在日コリアン生徒が多数在籍している学校でも,民族学級が設置されていないところが多く,絶対数がまだまだ少ない。おまけに,ほとんどの民族講師はボランティアに近い状態で勤務しており,経済的な保障がありません。大阪ではようやく97年度から,民族学級に専任講師を嘱託する制度を整えることに決まりましたが,さしあたって月給が支払われる講師の人数は5人だけです。

 では民族団体ではどのような活動が行われているか。

 一つは,地域の子ども会のようなかたちで,韓朝鮮語や韓朝鮮史の学習であるとか,民族的な伝統文化にふれる活動などが行われます。生徒たちが抱える悩みをみんなで話し合ったり,ということも主要な活動といえるかもしれません。

 地域に根付いた活動だけに,継続性もあり,日本の学校で行われる民族学級と同等かそれ以上の効果をあげうると考えられます。

 もう一つは民団や総連およびその傘下団体によって,年に数回,各地ないし全国の生徒を集めて,親睦と学習のための催しが開かれています。

 たとえ年に数回とはいえ,これが無視できません。大きな催しでは,その場に200人からの在日韓朝鮮人生徒が集まるわけです。その場では出自を隠す必要など全くない。お互いにぎこちなくも本名で呼び合う。夜を明かして互いの思いを語り合う。そしてなにより,たくさんの同胞の友人ができる。

 非日常的なお祭りですから,お祭りが終わればまた,通名を名乗り,出自をなんとなく明かしにくい日本学校の雰囲気のなかに戻っていくわけですが,それでも,「自分は一人じゃない」という実感はかなりの支えになるようです。

 これまでいろいろと,民族教育の担い手ごとにそれぞれの教育内容を述べてきましたが,残念ながら,そのいずれかの教育を受けたというものは,在日コリアンの青年のうち4割程度にすぎません。さらにその4割のなかでも,「ほとんど(民族教育を)受けていない」と実感するものが3割近くにのぼります。つまり,これまでに述べてきたような民族教育を少しでも受けたと実感するものは,在日コリアンの青年のうち,3割ほどしかいないわけです。

 かといって,残る7割のものがまったく民族教育を受けていないというわけではありません。それが,家庭教育です。

 在日コリアン青年のうち,民族的な先祖崇拝の宗教儀礼である「チェサ」を経験しているものは,全体の8割を越えます。チェサの実施に伴って,宗教観はもとより,クンジョル(大礼)などの儀礼,年長者を敬うことを大事にするような規範,食文化など,民族的な生活様式や価値観が伝達されることになります。

 また,民族ふうの結婚式であったり,民族的な儀礼(出生百日祝い,その他)を体験することをとおして,民族的な価値観を自然と学びとります。家族の生活史を語り合うことも,いわば生きた歴史教育になりえます。

 そうした生活体験のなかで無意識的に,ときには意識的になされる民族的な知識や価値観の伝達が,家庭教育ということです。