7. 満足度 
中原洪二郎 

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 満足とは,必要なものが足りている状態であると考えることができる。人によって必要さの程度は異なり,その必要が満たされていれば満足し,満たされなければ満足しない。つまり,満足度を考える上で重要なことは,満足している,あるいは不満を抱いている人々がどれくらいいるかということだけではなく,むしろ,人々が自らの満足を判断する基準が,どこにあるかを知ることである。   

 今回の調査では,7つの個別のトピックと,生活全般についての満足度を質問した(問5)。7つのトピックとは「仕事の内容」「勤め先(自営業の場合は事業内容)」「収入」「学歴」「余暇のすごしかた」「現在住んでいる住宅」「現在住んでいる地域の環境」であり,それぞれについて,「満足している−どちらかといえば満足している−どちらともいえない−どちらかといえば不満である−不満である」の5段階で満足度を測定した。   


図 7-1 満足度(単位%,項目名の( )は基数) 

 それぞれの項目について検討する前に,全体の様子を示しておこう。   

 項目は「不満である」「どちらかといえば不満である」をあわせた比率が高いものから順に並べてある。なお,調査時点で学生か無職の人には,「学歴」「余暇の過ごし方」「住宅」「地域の環境」「生活全般」のみに回答してもらっている。   

 全体の傾向としては,おおむね「満足」「どちらかといえば満足」が「不満」「どちらかといえば不満」を上回っている。他の項目と比較して,やや不満が多くなっているのは「収入」「学歴」の2項目である。   

 まず,項目同士の関連性について示そう。2つの変数の関係を表す統計的な指標として,相関係数を用いる。相関係数は2つの変数の関連の強さと方向を表すものであり,正の関係にあるときは符号がプラス,負の関係にあるときはマイナスになる。関係がない場合の絶対値はゼロ,完全に関係している場合の絶対値は1になる。   

表 7-1 満足度項目間の相関係数(全て1%水準で有意) 
仕事   勤め先   収入   学歴    余暇   住宅   地域   全般  
仕事   1.00  
勤め先   0.72   1.00  
収入   0.52   0.56   1.00   
学歴   0.22   0.22   0.21   1.00   
余暇   0.41   0.39   0.33   0.32   1.00  
住宅   0.27   0.28   0.34   0.19    0.33   1.00  
地域   0.27   0.28   0.24   0.11    0.27   0.48   1.00  
全般   0.43   0.46   0.50    0.25   0.50   0.49   0.46    1.00  

 すべての項目間の関係は統計的に認められ,関係の方向はすべてプラスである。つまり,ある項目に満足であれば,他の項目についても満足しているという傾向がある。下線で示した項目間は,特に強い関係が認められる。たとえば,生活全般に関する満足度は,学歴以外の満足度とは強く関係していることがわかる。学歴の満足度との関係も弱くはない。   

 以下はそれぞれの項目について,個別に検討する。   

7.1 収入の満足度   

 上で見たように,収入と学歴について不満を感じている人が,他の項目と比較して多いようである。そこで,不満と感じている人と満足している人との間に,どのような相違があるかを検討しよう。   

 まず,収入については,回答者の年収(問44)について比較する。問いの選択肢は,100万円未満については「0円」「50万円未満」「50〜100万円」の3カテゴリ,100万円から1000万円までは100万円間隔で区切り,1000万円以上は1カテゴリにして質問している。分析に用いている金額は,それらのカテゴリの中央値(たとえば100〜200万円未満の場合には150万円)である。   

表 7-2 収入満足度と年収の関連(単位 万円) 
パーセンタイル 
満足度  
平均値 
10 
25 
75 
90 
不満  
484.8 
150 
350 
450   850   
どちらともいえない  
535.5 
250 
350 
750   1000  
満足  
664.9 
250 
450 
1000   1000  

 表2.の見方について説明する。まず満足度は,「不満」「どちらかといえば不満」を合併して“不満”に,「満足」「どちらかといえば満足」を合併して“満足”に,「どちらともいえない」はそのままにして,カテゴリを再構成した。平均値は,満足度のカテゴリごとの収入項目の平均値,パーセンタイルは,たとえば10パーセンタイルであれば,回答者の収入項目それぞれについて,満足度のカテゴリごとに,収入の少ない方から回答者を順番に並べた場合,下から10%の位置にいる回答者の収入額をあらわしている。   

 表1によって次のようなことがわかる。まず,収入について不満だと感じている人の半数が350〜450万円という狭い範囲に集中している。対して,満足だと感じている人の半数は年収が1000万円以上である。不満だとしている人の75パーセンタイルと満足だとしている人の25パーセンタイルがともに450万円であり,どちらともいえないの平均値が500万円強であることを考慮すると,おおよそ500万円前後が,不満と満足を分けるラインであると考えられるだろう。   

 では,収入の満足度を説明する変数としては,年収以外にはどのようなものが考えられるだろうか。収入の必要性のレベルを変化させる原因として考えられるのは,回答者の「ライフ・ステージ」である。ライフ・ステージとは,人がその人生の中で直面する様々な状況の中で,年齢の増加にともなって,ある程度の順序をもって立ち現れ,かつ多くの人々が経験する状況を指す。学生から就職して社会人へ,結婚して家族を持ち,子供が産まれ,育て,やがて子供も独立し,自分は退職して,といったことである。この調査では,配偶者の有無,子供の有無,子供がいる場合にはその学齢,子供との同居・別居などについて質問している(問22)。   

 分析は,子供を持つ回答者693人にたいして行った。ライフ・ステージとして,「第1子(長男または長女)が小学校入学前」「第1子が小学生」「第1子が中学生」「第1子が高校生」「まだ高校以下に在学の子供がいる」「すでに結婚している子供がいる」「18歳以上で未婚の子供が同居している」「すべての子供が結婚しているか,もしくは結婚したことがある」「すべての子供が親とは別居している」の9項目について,回答者の家族について当てはまるものをすべて選んでもらった。この9項目のうちどれが,収入の満足度の高低に影響を与えているかを調べるが,その際,年収の影響を取り除き,ライフ・ステージそのもの効果がわかるように分析を行った。   

 その結果,年収に関わりなく,収入の満足度に最も強く影響するライフ・ステージは,「18歳以上で未婚の子供がいる」であることがわかった。18歳以上で未婚の子供がいる回答者は,収入の満足度が低く,いない回答者は高くなる傾向にある。   

 年収とライフ・ステージに関するこれらの分析結果は,在日韓国人に特有というものではなく,かなり一般的な傾向である。では,在日韓国人としての世代といった民族的属性,民族教育などの民族的経験は,収入の満足度に影響しないのだろうか。今回の調査に盛り込まれた項目の範囲内においては,ほとんど関係が認められなかった。ただし,満足・不満ごとの年収の分布状況などは,日本人と在日韓国人との間で異なる可能性があり,そのような意味では民族のおかれている状況が反映されていることも考えられる。いずれにせよ,今後の比較分析を要するところであろう。   

7.2 学歴の満足度   

 次に,収入の満足度と同様に,やや不満が多くなっている「学歴」の満足度について検討しよう。   

表 7-3 学歴満足度と教育年数の関連(単位 年) 
パーセンタイル 
満足度  
平均値 
10 
25 
75 
90 
不満  
10.4 
6.0 
9.0 
12.0 
16.0 
どちらともいえない  
11.6 
9.0 
11.0 
12.0 
16.0 
満足  
13.3 
9.6 
12.0 
16.0 
16.0 

 おおよそではあるが,6年が初等教育前期まで(小学校など),9年が初等教育後期まで(中学校など),12年が中等教育まで(高等学校など)。16年が高等教育中期まで(大学など)に該当する。つまり,学歴について不満だと感じている人の75%が高等学校卒まで,満足だと感じている人の75%までが高校卒業以上で大学卒も多いということになる。全体で見ると,大学へ進学するかしないかが,満足と不満を分けるひとつの目安になっていることがわかる。   

 しかし,学校へ通うことの意味や可能性が,時代によって大きく異なっていることはよく知られている事実である。そこで,学歴の満足度と教育年数の関連に加えて,世代の違いについて検討してみよう。   

 まず,世代を次のような基準で分割した。今回の調査では,回答者が在日の何世にあたるかを,父方からと母方からとの両方についてたずねている。おおよそ両者は一致しているので,父方から見て在日の何世かを世代の基本とした。ただし,父からみて在日2世,母から見て在日3世というカテゴリに属する人数が76人と少なくないので,これについては独立のカテゴリ「2-3世」とした。また,1世については,調査時点で50歳未満だった回答者は,戦後に日本へやってきた人々であると解釈して,「戦後1世」とした。1世で50〜65歳の回答者については,問25a「15歳時点での集住状況」での回答が「韓国・朝鮮に住んでいた」であった場合には「戦後1世」とし,それ以外の1世はすべて「戦前1世」とした。このような分け方は必ずしも厳密ではないが,少しでも時代の背景を分析に反映させるための手段として用いている。   

 さて,上記のように分けられた各世代について,教育年数の平均は表4のようになっている。   

表 7-4 世代・教育年数と学歴満足度 
世代   人数   平均年齢   平均教育年数   
学歴満足度(%) 
満足   どちらとも   
いえない   
不満  
戦前1世   106  
70.1 
7.8   

→  
21.0   

11.5  
24.8 
7.0 
54.3   

7.0  
戦後1世   30  
48.2 
13.1   

→  
31.0   

15.6  
20.7 
13.0 
48.3   

11.9  
2世   493  
50.7 
11.8   

→  
38.5   

13.0  
29.2 
11.6 
32.3   

10.6  
2-3世   76  
38.2 
13.6   

→  
43.4   

14.4  
34.2 
12.9 
22.4   

12.9  
3世   166  
33.2 
13.4   

→  
51.2   

14.1  
28.0 
12.9 
20.7   

12.8  
(学歴満足度の上段は各世代の%。  
下段は満足度ごとの平均教育年数)  

 まず,戦前1世と戦後1世について注目する。平均年齢には大きな開きがあり,平均教育年数についても初等教育後期と中等教育ほどの差となっている。満足度ごとに平均教育年数を見ると,戦前1世で「満足」とする回答者の平均教育年数が11.5年なのに対し,戦後1世では「不満」とする回答者の平均教育年数が11.9年という,著しい評価差が読みとれる。しかし学歴満足度の比率で見ると,どちらも不満が満足を大きく上回っていることがわかる。   

 また,戦後1世とほぼ同じ年齢層である2世では,戦後1世にくらべて平均教育年数がやや下回っており,満足だと回答している回答者の平均教育年数も3年近く下回っている関わらず,学歴満足度で満足が不満を若干上回っている。   

 2-3世と3世については,平均年齢,平均教育年数,学歴満足度ともにほぼ同様の傾向を示している。   

 以上のことは,学歴の満足度について,年齢,教育年数,世代などが,それぞれに別個の影響力を持っていることを示唆している。   

 さて,学歴の満足度については,最後に教育アスピレーションとの関連に触れておく。これまでに何度か述べているように,満足とは必要性の充足である。学歴については,「どの程度の学歴を得たかったか」を必要性の基準として,それが満たされている状態が満足のひとつの形態であるといっていいだろう。問11では,中学校(旧制は小学校)の最終学年の時に,学歴についてどのような希望を持っていたかを質問している。過去の意識・気持ちを回想して回答してもらっていることから,信頼性については一定の保留をしなければならないが,この変数を元にして,学歴の満足度について分析してみよう。   

 希望の学歴に達したか,それ以上の学歴を得た場合を“達成”,希望の学歴に達しなかった場合を“非達成”として,学歴の満足度との関係を示したのが表5である。

表 7-5 教育達成と学歴の満足度(単位 %) 
学歴の満足度 
教育達成   満足   どちらともいえない   不満  
達成   51.3  
27.4 
21.3   100.0 (489)  
非達成   23.8  
29.9 
46.3   100.0 (395)  
( )内は基数  
 あきらかに,学歴の満足度と教育達成の関係が読みとれる。同時に,達成したにもかかわらず不満であったり,あるいは非達成ながら満足であるという回答者も少なからず存在している。   

 参考までに,世代ごとに,どれぐらいの者が希望の学歴を“達成”しているかについて示す(表6)。

表 7-6 世代と教育達成(単位%) 
世代   達成者率  
戦前1世   23.4 (107)  
戦後1世   53.3 (30)  
2世   51.3 (493)  
2-3世   78.9 (76)  
3世   76.3 (167)  
全体   55.1 (873)  
( )内は基数   
7.3 住宅の満足度   

 次に,住宅の満足度について検討する。住宅の満足度については,それを規定する具体的な住居形態などについての項目がないので詳しく論じることは出来ないが,年収・預貯金・株式などの収入,資産項目を用いて,多少の分析を行おう。   

 表7は,住宅の満足度(満足−どちらともいえない−不満)ごとに,年収,預貯金,株式などの金額の平均値をまとめたものである。

表 7-7 住宅の満足度と収入,資産の平均(単位 万円) 
年収   預貯金   株式など  
満足   552.2  
415.9 
166.8  
どちらともいえない   454.7  
307.5 
95.3  
不満   542.5  
352.2 
115.1  
全体   533.2  
382.5 
142.7  

 年収よりも,預貯金額や株式などの所有の方が,住宅満足度との関係が強そうに見えるが,賃借住宅か自己所有かなどのデータに欠けるため,これ以上の議論は困難である。   

7.4 余暇の満足度   

 人間の生活を考える上で,職業生活を中心にするにしても,趣味などの個人的生活を中心にするにしても,余暇は重要な要素である。全体としては,半数以上の回答者が自分の余暇に満足していると回答しており,不満だとする回答者は2割程度である。   

 職業生活を中心として余暇を捉えるならば,回答者の従業上の地位(常時雇用されているか,臨時雇用か,自営業主か,といった区別)や,事業の種類,仕事の内容,役職を持っているかどうかなどによって,余暇の満足度が影響されることが考えられる。しかし分析の結果,これら職業にかかわる諸変数と余暇の満足度との間には何の関連も見いだされなかった。   

 また,基本的な属性との関連については,年齢,ライフ・ステージとの関連は認められず,収入項目とのみ関連が認められた(表8)。

表 7-8 余暇の満足度と収入,資産の平均(単位 万円) 
年収   預貯金   株式など  
満足   559.5   395.5   162.6  
どちらともいえない   501.1   370.3   129.3   
不満   507.0   363.6   102.2  
全体   534.4   382.4   141.4  

7.5 勤め先(自営業の場合は事業内容)の満足度   

 今回の調査で,産業・事業ごとの従事者数の上位は,工事業,飲食店,娯楽業,運送業,金融業,ゴム・皮革製造業,不動産業などで占められており,この8業種で全体のおよそ半数となる。そこで,これら代表的な業種ごとに,勤め先の満足度をみてみよう。

表 7-9 事業内容と勤め先の満足度(単位 %,( )内は基数) 
勤め先の満足度 
事業内容   満足   どちらとも   

いえない   
不満  
工事業   57.0  
23.9 
19.0   (142)  
飲食店   55.6  
23.2 
21.2   (102)  
娯楽業   55.6  
18.5 
25.9   (54)  
運送業   63.2  
21.1 
15.8   (40)  
金融業   68.6  
17.1 
14.3   (36)  
ゴム・皮革品製造業   50.0  
32.4 
17.6   (36)  
不動産業   70.6  
14.7 
14.7   (34)  
合計   58.5  
22.2 
19.3   (444)  
表 7-10 従業上の地位と勤め先満足度(単位 %,( )内は基数) 
勤め先の満足度 
満足   どちらとも   

いえない  
不満   
経営者(重役)役員   55.2  
26.9 
17.9   (145)  
一般従業者   65.2  
23.1 
11.7   (247)  
臨時雇用   55.6  
22.2 
22.2   (18)  
自営業主(雇用者なし)   39.1  
34.4 
26.5   (151)  
自営業主(雇用者あり)   54.9  
20.5 
24.6   (195)  
家族従業者   57.1  
23.8 
19.0   (42)  

 従事者が多い事業内容とはいえ,基数が小さいことから比率の解釈には注意を要するが,大まかな傾向を見て取ることができるだろう。不動産業,金融業などが「満足」だとする回答者が多い。ゴム・皮革品製造業は「満足」の割合が低いものの,「不満」とする回答者も少なく,「どちらともいえない」が,他の事業に比べて多くなっている。「不満」の割合が最も高いのは娯楽業,飲食店で,他の事業に比べて,「満足」とする回答者の割合と接近する傾向がある。   

 つまり,不動産業,金融業,運送業などに従事している回答者は,全体としておおむね満足だと回答する傾向にあるが,娯楽業,飲食店などは満足と不満にやや分化する傾向にある。   

 また,従業上の地位(問3a)によっても,満足−不満が大きく分かれるようである(表10)。   

 特に,雇用者をもたない自営業主は,勤め先(自分が経営する事業の内容)について,満足度が低くなっている。なお,職場での役職については,関連が認められなかった。   

 さて,次に職場における差別の体験との関連について分析する。勤め先の満足度と,職場における差別の関連を見るために,相関係数を用いた。   

 勤め先の満足度と職場での差別体験(問36b)との相関係数は−0.10,仕事上での差別体験との相関係数は−0.12である。満足度が高いことと差別体験が少ないこと(満足度が低いことと差別体験が多いこと)の間には,必ずしも強くはないが,統計的に有意な関係が認められる。   

7.6 仕事の内容の満足度   

 仕事の内容の満足度は,勤め先などの事業内容とは別に,事務や営業といった,実際に行っている仕事についての満足度である。   

 まず,職業8分類(専門,管理,事務,販売,熟練,半熟練,非熟練,農業)ごとに,仕事の内容の満足度の比率を示す(表11)。ただし,農業については従事者が2人しかいなかったため,分析から除いた。 

表 7-11 職業8分類と仕事の内容の満足度(単位 %,( )内は基数) 
仕事の内容の満足度 
満足   どちらとも   

いえない  
不満   
専門   71.1  
18.4 
10.5   (38)  
管理   83.5  
11.4 
5.1   (79)  
事務   63.3  
25.0 
11.7   (60)  
販売   57.6  
25.0 
17.4   (184)  
熟練   59.5  
25.9 
14.6   (158)  
半熟練   50.8  
27.5 
21.7   (120)  
非熟練   41.4  
41.4 
17.2   (29)  
全体   60.5  
24.4 
15.1   (668)  

 専門,管理で満足の比率が高く,半熟練,非熟練では低い。非熟練でどちらともいえないの比率が高いのを除けば,おおむねどの仕事についても満足が不満を大きく上回っている。   

 さて,勤め先の満足度と同様に,職場・仕事上での差別体験との関連を見ておこう。   

職場での差別体験(問36b)との相関係数は−0.09,仕事上での差別体験との相関係数は−0.12であり,仕事の内容満足度についても,勤め先の満足度と同じく,満足度が高いことと差別体験が少ないこと(満足度が低いことと差別体験が多いこと)の間には,必ずしも強くはないが,統計的に有意な関係が認められる。   

7.7 地域の環境の満足度   

 個別の項目としては最後に,地域の環境の満足度について検討しよう。まず現在,回答者が居住している地域が,在日同胞の集住地域かどうかとの関係について示す(表12)。 

表 7-12 同胞集住状況と地域の環境の満足度(単位%,( )内は基数) 
地域の環境の満足度 
満足   どちらとも   

いえない  
不満   
同胞多住地域   47.7  
30.7 
21.6   (88)  
比較的多い   63.0  
20.7 
16.3   (135)  
数軒程度   68.7  
17.5 
13.8   (217)  
1〜2軒   68.0  
20.1 
11.9   (219)  
同胞なし   74.1  
16.1 
9.8   (205)  
全体   66.9  
19.7 
13.5   (864)  

 同胞が多く住んでいる地域よりも,少ない地域の方が満足度が高く,少ない地域の方が不満度も高いことがわかる。これは何を意味するのであろうか。   

 まず,世代との関連でみると,1世や2世の方が,より高い割合で集住地域に居住していることがわかる(表13)。   

 年収についても,同胞多住地域の平均値が462.5万円,比較的多い地域が495.4万円,数軒程度で529.8万円,1〜2軒で527.4万円,同胞なしで582.6万円と,居住地域の同胞数に比例して所得が少なくなっている。   

 また,事業の種類については表14のように,ゴム・皮革品製造業を営む,あるいは勤務する回答者が多いことがわかる。   

 いくつかの要因が重なり合っているため,データから直接結論を導くためにはより厳密な分析によらねばならないが,これまでみてきたいくつかの変数の関連から推測するならば,同胞の集住と地域の環境の満足度の関係は,集住地域がおかれている経済的,産業構造的に苦しい立場を反映しているものと考えられる。

表 7-13 世代と集住の状況(単位 %,( )内は基数) 
集住の状況 
多住   多い   数軒   1,2軒    なし  
戦前1世   12.4   15.2   30.5   19.0    22.9   (105)  
戦後1世   17.9   14.3   28.6   25.0    14.3   (28)  
2世   11.5   16.7   25.4   24.3    22.1   (485)  
2-3世   6.9   16.7   19.4   31.9    25.0   (72)  
3世   6.8   13.0   21.1   30.4    28.6   (161)  
全体   10.6   15.7   24.8   25.5    23.4   (851)  
表 7-14 事業の内容と集住の状況(単位 %,( )内は基数) 
集住の状況 
多住   多い   数軒   1,2軒    なし  
工事業   10.1   22.5   21.0   23.2    23.2   (138)  
飲食店   8.1   11.1   28.3   29.3    23.2   (99)  
娯楽業   3.9   9.8   21.6   33.3    31.4   (51)  
運送業   12.8   7.7   35.9   17.9    25.6   (39)  
金融業   2.9   8.6   25.7   37.1    25.7   (35)  
ゴム・皮革品製造業   34.3   37.1   17.1    8.6   2.9   (35)  
不動産業   12.1   18.2   18.2   24.2    27.3   (33)  
全体   10.7   16.7   24.0   25.3    23.3   (430)  

7.8 生活全般の満足度(まとめ)   

 最初に表1(満足度項目間の相関係数)でみたように,満足度は互いに関連しあっており,特に生活全般の満足度は,まさにこれまでみた個別のトピックごとの満足度を代表するものであるといってよい。これを見る限りにおいて,在日同胞の生活は,満足度という観点からは,おおよそ充足しているといってもいいかもしれない。   

 しかし,この充足とは,あくまで現状における現実的な必要性の基準に基づくものであって,その基準が在日韓国人にとって本当に十分なものであるか,また正当なものであるかは別問題である。   

 また,在日韓国人が一様に高い満足度を示しているわけではなく,これまで分析してきたように,経済的状況や産業構造を背景として,明らかに生活上のさまざまな分野に満足していない人々が存在している。   

 日常の生活における満足度の様相は,日本における在日韓朝鮮人社会というマクロな観点と,在日社会における一人一人の同胞の状況というミクロな観点を同時に持つことの重要性を示している。   


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