11. 愛着 
中原洪二郎 

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11.1 愛着の結節点である「在日」   

 人は長年使い込んだ道具や仲のよい友人,住み着いた土地などに感じる親しみの感情を,「愛着」と表現することがある。愛着はいったん形成されると,非常に強く心理的に定着し,その対象への接し方やその他の行動に影響をあたえると考えられている。   

 この調査では,次の6つの対象,「自分が生まれ育った地域」「日本」「在日韓国・朝鮮人」「大韓民国」「朝鮮民主主義人民共和国」のそれぞれについて,愛着の強さを質問している。   

 まずは,全体の様子を見てみよう。   


図 11-1 6つの愛着 

 図1は,「非常に感じる」「どちらかといえば感じる」をあわせた比率が高いものから順番に並べてある。自分が生まれ育った地域に対して愛着を感じる人の割合が最も多く,朝鮮民主主義人民共和国(以下,北朝鮮)への愛着が最も少なくなっている。「非常に感じる」で見ると,統一された祖国に愛着を感じる人の割合が最も多く,ほぼ同率で生まれ育った地域が続き,北朝鮮への愛着が最も少なくなっている。   

 次に,各項目間の関係を相関係数によって見てみよう。   

 表1で,**印がついている項目間の関係が,統計的に認められたものである。特徴的なのは,「在日韓国・朝鮮人」に対する愛着が,その他のすべての項目と正の関係を持っていることである。つまり,在日に対する愛着が高ければ,回答者全体として,生育地域,日本,韓国,北朝鮮,統一祖国への愛着も高くなる傾向にある。「在日韓国・朝鮮人」という対象には,確かに上記のすべての要素が含まれているので,予想される結果といってよいだろう。
   

表 11-1 愛着各項目間の相関係数 
生育地域   日本   在日   韓国    北朝鮮   統一祖国  
生育地域   1.00  
日本   0.28**   1.00  
在日   0.32**   0.11**   1.00  
韓国   0.24**   0.01   0.60**   1.00   
北朝鮮   0.03   0.02   0.23**   0.18**    1.00  
統一祖国   0.15**   -0.00   0.40**   0.52**   0.24**   1.00  
(** p<0.01)   
11.2 世代差と年齢差   

 次に,いくつかの属性による違いについて検討しよう。愛着のそれぞれについて「非常に感じる」を5点,「どちらかといえば感じる」を4点,「どちらともいえない」を3点,「どちらかといえば感じない」を2点,「まったく感じない」を1点に得点化した。まず世代と年齢ごとに,その平均得点を比較してみる。   

図 11-2 世代ごとの愛着平均得点
図 11-3 年齢ごとの愛着平均得点 

 図2は世代ごとの,図3は年齢ごとの愛着平均得点を表したものである。分散分析の結果,北朝鮮を除く全ての対象について世代差が認められた。また韓国と統一祖国については年齢による差も認められた。   

 世代差は,日本への愛着については世代が新しいほど愛着が強く,その他については弱くなっている。年齢差については,韓国と統一祖国のいずれについても,若いほど愛着が弱くなっている。   

 これらの結果は,世代によってそれぞれの対象についての関与の程度が異なることによる影響と,経年による愛着の強化とが存在していることをうかがわせる。   

11.3 満足度と愛着   

 次に,愛着と同じく,心理的な変数である満足度との間の関係を見てみよう。表2は,満足度と愛着について,年齢・世代・収入の影響を取り除いた偏相関係数をまとめたものである。 

表 11-2 満足度と愛着(年齢・世代・収入を統制した偏相関係数) 
生育地域 
日本 
在日 
韓国 
北朝鮮 
統一祖国 
仕事の内容   0.10**   0.15**   −0.02    0.05   −0.05   −0.02  
勤め先   0.11**   0.15**   0.02   0.05   −0.04   −0.07  
収入   0.09*   0.09*   −0.00   0.01    −0.00   −0.03  
学歴   0.05   0.01   0.01   0.04    0.00   −0.02  
余暇   0.09*   0.08*   −0.02   0.03    −0.00   0.01  
住宅   0.12**   0.17**   0.02   0.01    −0.04   −0.05  
地域   0.18**   0.26**   0.12**   0.15**   0.03   0.11**  
全般   0.14**   0.18**   0.00   0.05    0.02   −0.02  

 特徴的なのは,まず生育地域と日本の愛着度が,学歴を除くすべての満足度と関連していることである。多くの回答者にとって生育地域と日本が同じ性質のものであり,かつそこで満足して生活することと,その生活の場である日本へ愛着を持つことの間には,一定の関連があるといえるだろう。もう一つの特徴といえるのが,現在住んでいる地域の環境の満足度が,北朝鮮を除くすべての愛着と関連していることである。問43で,居住地域へのコミットメントについて質問しているが,これらでさらに統制してもなお,地域への満足度と各愛着の間には有意な関連が認められた。またさらに現在居住している地域が同胞多住地域であるか否かにも関わらず,やはり関連が認められるのである。   

 現在の居住地域と密接な関わりがある「生育地域」「日本」「在日」については,多くの要因を統制してもなお,地域への満足度と愛着との間に関連が認められることは理解できる結果である。しかしなぜ「韓国」や「統一祖国」との間にも有意な関連が認められるかについては明らかでない。今後そのメカニズムの特定を行う必要があるだろう。   


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