在日朝鮮人をめぐる時事問題
Vol. 2


[ 配信記事一覧 ] [ HAN-A面 ] [ HAN-B面 ] [ HANBoard ]


  • 1995/11/22 配信

    外国人登録原票開示へ

     昨日21日,法務省は外国人登録原票を本人に限って公開するよう方針を転換しました。実施は12月1日からになります。久しぶりのグッドニュースです。


    人種差別撤廃条約批准へ

     昨日21日,人種差別撤廃条約が30年もの紆余曲折を経て,衆院本会議で承認され参院に送られました。

     昨年批准したアメリカ合衆国を含めて,これまで145カ国が批准済みであるにもかかわらず,日本がここまでずるずると批准を遅らせてきた理由は,一部の留保条件の取り扱いでもめていたためです。つまり,差別の排除を目的とした規定が,日本憲法のいう表現の自由や結社の自由に抵触するという反論があったわけです。もちろん,差別する自由などあろうはずもないので,部落解放基本法などの制定に反対する勢力が持ち出した方便にすぎません。しかしながら,憲法を守る立場の法務省と,条約の完全批准を目指す外務省がドロ沼的な代理戦争に突入し,今日に至ったというわけです。

     で,問題となっていた当事国の差別撤廃義務はどうなったかということですが,これはおそらく法務省の見解に沿って留保条件付きになったものと思われます。最終段階で確認する必要がありますが,差別撤廃義務のない人種差別撤廃条約なんて,まるっきり意味がありません。人権後進国ではないというポーズを見せるだけのアリバイにすぎないわけです。

     なお,この条約は子どもの人権条約などと違って外国人には適用されませんので,韓国籍や朝鮮籍をもつ大多数の在日朝鮮人にとっては,法的にはなんら影響を及ぼしません。直接の対象になるのは,日本国籍を持つ在日朝鮮人のケースです。たとえば,帰化者が警察や自衛隊に就職できないとか,就職はできても昇進しにくいといった実状がもしもあるとするなら,条約違反ということになります。

     蛇足ですが,すでに日本も批准している子どもの人権条約は,国籍にかかわらずすべての「子ども」に適用されますので,国家として18歳以下を対象におこなうあらゆる施策は,憲法に違反しないかぎり在日朝鮮人を排除してはならないのです。地方自治体や公営企業など国家に準じる政体や法人についても同じです。したがって,たとえば国体の参加資格には国籍条項が残っていますが,僕の理解が間違っていないかぎり,エントリー選手が18歳以下である場合その選手が外国人であろうとも排除してはならないということになるはずです。


  • 1995/11/18 配信

    東京都墨田区教育委員会の積極姿勢

     タイトルに挙げたのは何のことかといいますと,在日朝鮮人ら在日外国人の児童・生徒にたいして本名使用をすすめる内容の指針を作成する,という積極姿勢のことです。具体的な内容は未定ですが,来年4月までに上記内容の指針を作成することが決まりました。こうした対応は,まだ全国約4千の自治体数からみるとごく一部にすぎませんが,在日朝鮮人の人口が多い地域を中心にして,最近になって徐々に増えてきています。

     たとえば,東京都の荒川区では,1985年以降,区立の小・中学校入学予定の子どもをもつ在日韓国・朝鮮人の保護者にたいして,「本名就学の勧め」の文書を出すようにしています。その文書の後半部分を引用してみましょう。

    日本社会において,人種,民族,国籍を異にすることによる偏見や差別が残っているため本名を名乗ることに大きな勇気がいることも事実であると考えております。しかし,在日韓国・朝鮮人の保護者の皆さん,お子さまをどうか誇りをもって本名で入学させてください。区教育委員会は,本名を名乗ることによって起こる偏見や差別を許さないような指導の徹底に努めます。
     さらに荒川区では,93年4月にこれを教育指針として明確化しています。現実問題としては,どこまで具体的なサポートが期待できるか心許なくもありますが,少なくとも誠意が感じられます。心意気がありがたいですね。また,神奈川県では教育指針ともに「指導の手引き」を作成しています。墨田区がどこまで踏み込んだ内容の指針を策定できるかまだ不安定ですが,在日児童・生徒が本名と出自だけでなく,住んでいる地域に愛着と誇りが持てるような,そんな内容であることを期待したいものです。


    東京都中野区の積極姿勢

     こちらは,すでにHANでも報じている外国人登録原票の開示問題への積極姿勢です。これは13日,無所属の佐藤浩子区議と箕輪充孝区民部長の質疑応答から明らかになったものです。答弁にたった箕輪充孝区民部長によると,「10日に関係諸課と佐藤区議の質問への回答を検討した結果,原票本人開示を妨げる特段の理由がないと判断した」とのことです。さらに,非開示の原則を見直すよう,法務省に要請する考えを明らかにしました。こうした要請が自治体からなされるのは,東京都内では初めてとのことです。


  • 1995/11/17 配信

    APECに関連して

     APEC参加のため,本日17日午前,韓国の金泳三大統領が来日しました。夕方には,おもに韓国籍の在日朝鮮人との懇談のためパーティに出席します。阪神大震災時の母国の支援に謝意を示すという意味もあるようです。僕は今日たまたまある民族団体の理事会に出席していたのですが,午後4時には閉会となり,出席者はみなさんそそくさとパーティー会場へと向かいました。

     一方,APEC会場では,「在日党」と「RENK(救え!北朝鮮の民衆・緊急行動ネットワーク)」のメンバーが,在日朝鮮人の権利の現状を知ってもらおうとビラを配布したそうです。もっとも,警察官や外務省関係者との押し問答のあげく門前払いをくわされたようですが。いつもながら独特の運動戦略ではありますが,元気がありますね。


    在日同胞の新しい共同体を求めて

     明日18日土曜日から19日にかけて,「在日同胞の新しい共同体を求めて」と題したシンポジウムが大阪で開催されます。特定の民族組織の主張にかたよらず,在日朝鮮人の歴史と展望を広範な視野から見通すといった趣旨のものです(総連はあまり快く思っていないようですが,とくに反対はしていないようです)。場所はJR大阪駅近くの毎日新聞ビル(オーバルホール),時間は両日とも午前11時半から午後5時半までです。

     このシンポジウム,今月3〜4日に東京でも開催されましたが,タイトルに恥じない非常に意欲的な内容だったようです。先日(10日〜11日)の「在日韓国・朝鮮人の未来と人権」研究集会といい,このシンポジウムといい,(民促協のシンポはいつだったかな)解放50周年にあたる今年は大きな会議が目白押しですね。

     ただ,一部でこうした動きが活発化しているといっても,最大の民族組織である民団と総連が全面的な対話へと踏み出さないかぎり,在日朝鮮人全体の福祉に寄与するような実効性のある活動が盛り上がることはないでしょう。民族教育,年金問題,戦後補償問題など,在日朝鮮人が抱える問題は山積しています。民団と総連は,その功罪の歴史をどのように清算していくつもりなのでしょうか。


  • 1995/11/14 配信

    「寺内文庫」一部返還

     先だって,光復(戦後)50周年を節目に「日帝の残滓」を払拭するということで,朝鮮総督府庁舎の解体・撤去が開始されたことは周知のとおりです。この府の初代総督であった寺内正毅は,就任中に朝鮮や中国で収集した文化財を,出身地の学府である山口女子大に寄贈していました。これが「寺内文庫」です。国宝,重要文化財級のものを含めて千点あまり保管されていると言われています。

     さる11日,山口女子大は韓国の慶南大学に寄贈する形で,李氏朝鮮時代の書画など寺内文庫の一部135点を返還する覚書に調印しました。どういった形態であれ,植民地時代に略奪された文化財の「返還」が実現することは珍しく,今後のモデルケースになりそうです。

     さて,この寺内文庫について,中国新聞は「朝鮮総督に就任してから買い求めたり,日本で集めたものとみられる」と報道しました(8日付け)。「江藤妄言」の一部にも,「李王朝の金銀財宝を日本に持ってきて飾っているようなところはない」というくだりがありましたが,本気で「購入した」ものであると考えているのでしょうか。これほどのコレクションを,しかも総督就任中に? ちなみに,韓国のマスコミは「強奪」ないし「略奪」したものとして報道しています。

     もちろん,すべてが略奪であると考えるのも無理がありますが,かといって,ほとんどを購入したという説明にはまったくリアリティがありません。かりに「購入」したケースがあるとしても,正当な報酬を支払ったかどうかは疑わしいものです。事実上の「略奪」であったと考えるのが妥当でしょう。江藤氏の無知と正当化のほうはともあれ,中国新聞はジャーナリズムを何と心得ているのでしょうか。歴史認識以前の問題です。


  • 1995/11/13 配信

    町要覧に「朝鮮征伐」

     滋賀県蒲生郡日野町が今年10月に発行した「町勢要覧」に豊臣秀吉の朝鮮出兵を「朝鮮征伐」と表現した部分があり,本日13日,県内の在日朝鮮人問題研究会など3団体が抗議しました。秀吉による朝鮮侵略は,周知のとおり,現在では「朝鮮出兵」と呼ばれていますが,戦前(戦中)は皇国史観の影響などによって,「朝鮮征伐」と呼ばれていたわけです。そうした歴史認識を持たずに,戦前の資料を安易に参照して郷土史などを編纂すると,このような問題が起こるわけです。

     この問題,じつは日野町に限った話ではありません。毎年のようにどこかの自治体が発行する雑誌に載る表現なのです。したがって,それに抗議する運動もまるでモグラたたきのようなものでして,地道な,ほんとうに地道な努力と,民族間の相互理解にかける根強い熱意が背景にあるのです。

     みなさんがお住まいの市町村も,広報のなかに郷土史や民話のようなものを掲載していると思います。一度,注意深くバックナンバーを参照してみてください。かなりの確率で,「朝鮮征伐」という表現を見つけることができるでしょう。この表現を見つけたとき,気が付いたとき,「またか…」とか「ふーん」とかいって無視したりせず,担当者の歴史認識を問えるかどうかが,国際性の指針となるでしょう。

     余談ですが,僕はかつてある学生の民族団体に所属しておりまして,福岡市の北端にある志賀島(金印が発掘されたところです)の民宿で親睦会を催したことがあります。小さな古い民宿でしたが,ロビーの横には,おそらく戦時中に描かれたであろう「朝鮮征伐絵図」が誇らしげに掲げてありました(^_^;)。民宿の管理人は年代物として大切にしている風でしたし,こちらも値切りに値切って宿泊していたこともあって(一泊朝食付きで2500円だったかな),コトを荒立てるようなことはしませんでしたが,あれが例えば自治体の建物の中に掛けられていたものだとしたら黙ってはいられなかったでしょう。

     なお,福岡は出兵のための基地でしたので,あちこちの神社にそういった絵が納められています。初詣の時に賽銭を投げ込む社みたいなものがありますよね。いわば神社のカオの部分ですが,だいたいそのヒサシの内側などに(つまり一番目立つところに)あることが多いようです。もはやある種の文化財的なものになりつつありますが,掲げ続けるのであれば,それなりの覚悟と歴史認識を持っていただく必要があります。

     余談のついでにもう一点。日本を代表する昔話の「桃太郎」。ももたろうが海を渡って討伐した「鬼」さんというのは,いったい何のことなんでしょうかね? その「鬼」さん,何か悪さでもしたというのでしょうか? 逆に金銀財宝を略奪したのはももたろうのほうではなかったでしょうかね。こんな話が子どもたちのいじめを助長しなければいいのですが(冗談)。いずれにしても,教育によくない昔話ですね(ちょっと本気)。


    江藤総務庁長官の問題発言2

     本日13日,韓国の新聞数紙を検索してみましたが,いくつか興味深い点を発見しました。まず,問題が発覚した8日から10日ごろまでは,「江藤総務庁長官(ないし江藤長官)の問題発言」という表現が多かったのにたいして,11日にはいると「江藤妄言」という表現が固有名詞化していました。

     そして,韓国の新聞が批判しているのは,つい先立っての村山首相の問題発言などとあわせて,日本の過去を正当化する「謀略」的な発言群の倫理性にかかわるものであって,在日朝鮮人にたいする無知を指摘したものは一つとして見つけることができませんでした。

     「今日,日本では経済界,芸能界,野球選手とあらゆる面で韓国人が活躍している。韓国から日本に来て,あらゆる階層で活動するようになった。日韓併合条約の大筋の効果だったかもしれない」というくだり,許されざる事実誤認の最たる部分なのですが。この点,韓国のマスコミの視野にも在日朝鮮人の姿が映っていないということがうかがわれますね。


    [ 配信記事一覧 ] [ HAN-A面 ] [ HAN-B面 ] [ HANBoard ]