「反日教育」という発想の本末転倒
昨日12月27日,新進党幹事長である小沢一郎氏が,同党の党首戦において羽田氏の約2倍にあたる112万票余を得て当選しました。これによって本日にも党首就任が承認されます。ということで,これまでは野党の一政治家の発言としてHANでは触れませんでしたが,これを期に小沢氏が選挙戦中に物議を醸した発言を振り返ってみようと思います。
問題となったのは,今月18日の日本評論家協会の会合で,「私は韓国や中国に『政治的意図で反日教育をしておいて,何が将来の友好だ。いつまでも憎悪を忘れさせず,残るのは憎しみだけだ』などといつも言っている。そのようなことをきちんと面と向かっていうことが大切だ」と述べたというもの。
さらにオマケがあります。この発言にたいして韓国外務省スポークスマンが「日本の影響力ある政治家が,韓国の教育が政治的意図による反日教育だと誤った認識をもっている。驚きを禁じえない」などと論評したことについて,「『反日教育』とは言っていない。全部のコメントを見てもらえば分かるはずだ。彼らの理解は短絡的すぎる」などと反論しています。
さて,「反日教育」とは「客観的事実にもとづかない主観的な価値付け(=政治的意図)によって日本への憎悪をかき立てるような教育」であるとしましょう。はたして,韓国の教育現場で「反日教育」は行われているのでしょうか。
私見を述べると,実際の教育現場でそれが皆無であるとは思えません。授業というのは,教科書に記述されている内容のみでなされるものではなく,教員の知識を動員しながら進められるものだからです。日本にたいする理解の乏しい教員が,場合によって反日教育的な発言をすることもあるでしょう。
しかし,政治家としての発言である以上,問題は公的レベル,すなわち,教科書に記載されているレベルに限定すべきだと思われます。そう考えると,韓国において反日教育と判断される教育はおこなわれていないと言えます。なぜなら,日韓関係に関する記述は,すべて客観的事実に基づいているからです。
豊臣秀吉の蛮行,植民地支配にいたるプロセス,植民地支配中の惨劇,いずれをとっても,かりに小沢氏の言うように「いつまでも憎悪を忘れさせ」ないテーマであるとしても,客観的事実に基づいた記述にすぎません。歴史上の事実を反面教師として教科書に掲載しているだけで,「反日教育」などと言われる筋合いはありません。
ひるがえって日本の教育を考えてみると,植民地支配を含めた日韓関係の歴史については,ごくわずかな記述しかありません。わずかな記述どころか,「政治的意図」によって中国への「侵略」を「進出」と書き換えようとしたことは,まだ記憶に新しい出来事です。近年になってかすかに改善の兆しが見られるようにはなりましたが,基本的な態度として,過去の蛮行を恥じ,反省するという姿勢が感じられないのです。それどころか,今回の発言のように,隣国の教育を憎悪的だと論断することによって自らの罪跡を糊塗しようとする卑怯な態度さえ,見え隠れしています。こういった本末転倒の発想をゆるす歴史への無知は,客観的事実を学ぶことによってしか解消できないでしょう。
思えば1992〜93年ごろ,「嫌韓」という言葉がマスコミをにぎわしたことがあります。いや,過去形だと正確じゃありませんね。いまでも毎年夏(終戦/解放記念日ごろ)になると,紙面のどこかに登場している言葉ですから。いずれにしてもこの「嫌韓」という言葉,ようするに,日本政府要人の歴史認識にたいして韓国与論が「面と向かって」異議をもうしたて続けていることによって昂じた感情的な反発のことです。
「嫌韓」派の日本人がどれぐらいの比率を占めるのかは分かりませんが,少なくとも,今回の小沢発言にたいしては“よく言ってくれた”と考えていることでしょう。少数派であることを切に願いたいものですが,小沢党首当選の事実が何とも暗澹たる気持ちを誘います。
大阪・泉大津のいじめ問題
大阪府泉大津市の市立穴師小学校に通う在日韓国人三世の女子児童(9歳)が民族差別的ないじめを受けていた問題で,19日早朝から同市役所前で学校側との話し合いを求め座り込んでいた児童の母親らは,同市教育委員会との協議の結果,一定の成果を得られたとして同日夕方,座り込みを中止しました。
同市教委は,(1)在日外国人問題の教育指針の策定を急ぐ,(2)教員研修の充実を図る,(3)話し合いに応じるようあらためて学校側に働きかける,という3点を約束。保護者らが今月15日,同市教育委員会に提出した「在日外国人児童・生徒に対する教育の充実を求める要望書」に沿うかたちになったということです。
問題の発端は,1993年12月,長女が上級生ら数人から「むかつく。韓国人め。死ね。韓国に帰れ。」などと書いた手紙を渡されたり,暴力を受けるなどのいじめに遭っていたこと。長女はこの影響で急性腸炎で入院したり,腎臓障害を生じたということです。
母親はすぐに学校側に報告し,いじめの実態解明や民族教育の充実などを繰り返し要望したのですが,納得のいく回答は得られませんでした。このため,保護者会(オリニの会)や大阪市の市民団体に協力を求めたところ,教師らは「両親との話し合いには応じるが,外部団体の介入は許さない」「何でよそに相談したのか」などと反発して話し合いを拒否。その後,約2年間も議論は平行線をたどったままだったため,座り込みの活動となったわけです。
2年間ものあいだ民族差別事件への対処を拒否・放置してきた穴師小学校にはあきれるばかりですが,いじめ問題についての対応を見るかぎり,ことは穴師小学校に固有の問題ではないように思われます。結果として一定の成果を勝ち取ったとはいえ,先行きを考えるとなんとも陰鬱な気分にさせられる一件です。
「指紋」について
昨日14日,大阪市生野区在住の張征峰さんが個人情報の訂正,削除権を認めた「大阪市個人情報保護条例」(今年10月施行)にもとづいて,大阪市にたいして外国人登録原票に記載されている指紋と顔写真の削除を求める請求を行いました。
同条例では「市などが規定に違反して自己の個人情報を収集していると認められる時は当該情報の削除を請求できる」と定めています。請求を受けた場合,市長が請求翌日から30日以内に承諾するか拒否するかの決定をすることになっています。
指紋の廃棄問題では,92年の外国人登録法改正審議の際,参議院で「永住権を持つ指紋押捺免除者の指紋原紙の速やかな廃棄と外国人登録原票の指紋部分について法改正の趣旨を踏まえた措置の速やかな検討」という付帯決議がされています。しかしながら,今なお原票に指紋を添付している自治体は少なくありません。私の居住する茨木市では,指紋部分は少なくとも外国人登録原票とは別個に保管しているように見えますが,破棄しているかどうかは不明です。
指紋採取に関連してもう一件お伝えします。本日15日,指紋押捺を拒否して外国人登録法違反の罪に問われた日系米人宣教師ロナルド・ススム・フジヨシ氏の上告審判決で,最高裁第三小法廷は罰金一万円の一,二審判決を支持し,フジヨシ氏の上告を棄却しました。
指紋押捺制度の違憲性については,「当時の指紋押なつ制度は,3年に1度,1指だけの押捺義務であり,精神的,肉体的に過度の苦痛を伴うとまでは言えない。方法としても,一般的に許容される限度を超えない相当なものであり,憲法には違反しない」とのことです。
精神的苦痛の源は指紋採取という事実そのものにあるわけで,3年に1度などという頻度の問題ではありませんし,ましてや指一本だけならよいということではありません。要するに司法が行政に遠慮した判決と言えるでしょう。
小学校では民主主義の根幹として「三権分立」という概念を習いましたし,高校の日本史では「大津事件」に感動しました。しかし,大学の教養で「統治行為論」を学び,司法が行政に従属することがあるということを知ったときは,まるで詐欺にでもあったかのような驚愕を覚えたものです。日本の正義っていったい何なんでしょうか?
別項にて,指紋押捺制度の変遷について簡単に解説しておきます。
定時制廃止に不服審査申し立てへ
先月8日に大阪府教育委員会で廃止の方針が決定した府立定時制高校問題ですが,水際での攻防は続いています。「定時制高校存続6校連絡会」「大阪の夜間高校を励ます会」「登校拒否を克服する会」の3団体が,行政不服審査申し立ての手続きに入りました。大阪府および府教育委員会より文書で手続き方法の回答があり次第,申し立てにうつることになります。
「在日外国人教育にかかわる指導指針」
奈良県大和高田市で,標題の策定委員会の委員に同市在住の在日朝鮮人保護者が選出されました。策定委員会そのものは8月にスタートしていたのですが,最大の当事者である在日朝鮮人保護者が参加できるようになるまでには様々な紆余曲折があったといいます。民族教育が在日朝鮮人全体にかかわる重要課題であること,同時に,旧いイデオロギーとはある程度独立した課題であること,そして何より,広範な関係者の地道な努力があったことにより,市教育委員会を動かした格好です。
戦時賃金未払い問題
いわゆる「強制連行」には,日本政府だけでなく日本企業が密接に関係していたことが明らかになっています。こうした企業のなかには,敗戦のどさくさにまぎれて朝鮮人労働者に賃金を支払っていないところもあり,ここ数年,その未払い賃金の返還を求める訴訟が相次いでいます。
三菱重工長崎訴訟
不二越訴訟
新日鉄訴訟
三菱重工広島訴訟
このほか,ストライキを起こしたことにたいして暴力的な弾圧を受けたことへの謝罪と補償を求めた日本鋼管訴訟,強制連行された中国人生存者および死亡者遺族による鹿島建設訴訟などがあります。
ハングルコードやっと安定か?
これは,在日朝鮮人に関連する時事問題ではありませんが,おそらくHANにアクセスされる方のうち少なくない割合の人が興味をお持ちになるであろう話題です。といっても,私もあまり詳しくは分かりませんので,間違いがあればどなたかフォローをお願いします。
今月6日,韓国工業振興庁においてユニコードに相当するハングルコードをKS規格(KSC5700)として制定・告知しました。ハングルのコード体系をめぐる長い争いは,これで落ち着くことになるのでしょうか。諸コード体系の詳細についてはこちらを参照していただくとして,ここでは簡単にかいつまんで解説しておきましょう。
これまで,韓国では文字コードについてKS完成型(KSC5601=EUC-KR)と常用組み合わせ型という2通りの公的規格が併存していたのですが,それぞれに一長一短あるとともに,規格が普及するまでの経緯についてユーザー無視だなどの批判があり,うまくコンセンサスを形成できずにきました。
また最近では,韓国のマイクロソフトが独自に拡張した文字コード(統合型)をWindows95に採用すると公表したために,デモを含む国家的な批判が噴出し,結果としてKS完成型に修正して発売するなどの騒ぎが起こったりしました。韓国でWindows95の発売が日本よりも遅れた最大の理由は,コードの修正に時間を要したためだということです。
これまでこうした騒ぎが絶えなかった最大の理由は,政府の後押しもあって事実上の標準となったKS完成型では,表示できるハングルの数に限りがあるという問題を抱えていたことにあります。今回制定・告知された新しいコード体系ではこの問題が解消されており,すべてのハングルを表記できるだけでなく,アレアなどの古語も含まれています。
現在でも文字コードに統一がとれていないわけですから,案外,新コード規格が一般化するのは早いかもしれません。もちろん,そのためには対応ソフトや変換プログラムなどが登場する必要がありますが,なによりWindows95のコードが新規格に変更される可能性だって残されています。
ともあれ,英語や日本語のシステムでハングルを表示・編集する必要のある身にとっては,何でもいいですから早いところコードを統一して欲しいところです。
三菱重工長崎造船所に強制連行され被爆した金順吉さんが,国と三菱を相手に損害賠償と未払い賃金の返還を求め,長崎地裁に92年7月に提訴。
不二越に「女子挺身隊」「男子徴用工」として強制連行された生存者3人が未払い賃金の支払い,損害賠償,謝罪文の新聞掲載を求め,富山地裁に92年9月に提訴。
旧日本製鉄釜石製鉄所に強制連行され,連合軍艦砲射撃により死亡した遺族11人が,遺骨と未払い賃金の返還を求めて95年9月に東京地裁に提訴。
三菱重工広島造船所に強制連行され被爆した徴用工5人が未払い賃金の返還を求めて95年12月に広島地裁に提訴。