在日朝鮮人をめぐる時事問題
Vol. 11


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  • 1996/04/04 配信

    「時事問題」移転の予告

     時事問題ではありませんが,「時事問題」に関連する予告です。ここ「時事問題」も,5ヶ月のあいだに総ファイル数が12,総ファイル容量で135KBとなりました。そのすべてを,現在は http://www.han.org/a/ というHAN-A面のルートディレクトリにおいているため,今後も同様のペースで増えていくと管理が困難になると予想されます。また将来,記事内容の検索機能を用意したいと考えていますが,そのためにも「時事問題」を独立のフォルダに移転することが必要です。

     ということで,「時事問題」は今後近いうちに, http://www.han.org/a/topics/ に移転するかもしれないことを予告しておきます。


  • 1996/04/03 配信

    地方参政権のかわりに川崎市で「三部会」?

     川崎市在住の外国人に市政参加への道を開く「外国人市民代表者会議」(仮称)の設置を検討していた市調査研究委員会,は昨日2日,地方参政権にかわる制度として同会議を設置するよう高橋清市長に報告したとのこと。「外国人の意見を市政や街づくりに反映させる」というフレコミで,年内をめどに全国初の条例化を目指すらしい。

     答申によると,代表者会議の定数は26人。対象は18歳以上で市内に1年以上居住し,外国人登録している人。さしあたって公募か推薦制で選ぶが,将来は選挙による代表者選出を目指すという。会議の仕組みというか役割は,よく分かりませんがどうやら,市長が同会議の意見を市議会に報告するという形で意見表明の機会を与える,ということのようです。

     この会議制度は,一部の在日朝鮮人団体などが熱心に実現を望んできたものらしいので,あまり批判したくはないのですが,正直言って“そりゃ三部会か?”というのが僕の印象です。

     三部会というのは,もちろんヨーロッパ中世の身分制議会のことです。僧侶,貴族,第三身分(平民)の各代表によって構成されており,各身分ごとに会議が分断されていたため,この名前があります。三部会は,国王の政治にたいする平民の不満をガス抜きするために考案されたもので,定期的に開催されるものではなく,その時々の問題状況にあわせて都合のいいように利用されました。

     まぁ,外国人であっても住民なのですから(川崎市の場合,約2万人),その声を行政に反映させたいという気持ちがあることは評価できます。しかし,声をあげれば本当に反映するのでしょうか? たとえ代表者を外国人の選挙によって選ぶようになったとしても,市議会での議決権を定員分だけ得られるのでしょうか? 首長を通じて懇願するだけなんですよね? だったら,中世の三部会より劣っているとさえ言えます。そんな中途半端な制度に,どんな正当性があるというのでしょう。意見を聞くだけなら,公聴会と同じです。それを「地方参政権にかわる制度」「外国人の意見を市政や街づくりに反映させる」などと謳いあげるのは,独善もいいところです。

     やるならきちんと選挙権を整備するよう,いっそう努力する。それができないなら,ごまかしのようなことはやらない。かりに経過的な措置だとしても,「外国人公聴会」とでも表現すべきであり,「外国人市民代表者会議」などと誇大に宣伝しない。――それが,誠意ってもんじゃないのでしょうか。


  • 1996/04/02 配信

    天理教がいまだ「京城」を使用

     この問題,予想外に長引いています。問題というのは,2年ほど前に国際在日韓国・朝鮮人研究会の指摘から発覚したものですが,天理教の教会などに「京城」という呼称が今も使われている,というものです。在日本大韓民国民団奈良県地方本部と国際在日韓国・朝鮮人研究会は,昨日1日,改称などを求める抗議文を同教会本部に出しました。

     天理教の関連施設で「京城」が使われているのは,京都市の「京城大教会」と天理市の「京城大教会信者詰所」で,教会はソウルにあったものを戦後に移転,詰所は昭和50年に建設されたということです。ちなみに「京城」とは,韓国の首都ソウルを植民地時代に強制的に変名させられた呼称のことです。

     天理教渉外課は「今月中旬までには回答したい」と回答したようですが,この問題が指摘された当初から同じ返答をしていたように覚えているのですがね。

     私としては,「京城」や「満州」などの呼称を,日本帝国主義の残滓だとして場合を問わず原理主義的に否定するのも問題があると考えています。しかし,天理教のケースについては,植民地支配の象徴として問題視されている名称を使い続けることに,積極的な意義を認めることはできません。というのも,天理教や創価学会などいわゆる新宗教は――いや新宗教に限らず日本の伝統宗教はいずれも同じ態度でしたが特に新宗教は――宗教弾圧から逃れるため,かつて政府の植民地政策に積極的に協力したという暗い歴史を持っています。だからこそ,そうした過去の歴史を自ら断固として問い直す姿勢を見せてほしいのです。でなければ,天理教は,いまだに帝国主義の妄想から抜けきれていないと判断せざるをえません。

     ここから余談です。先日,日本解放社会学会大会が天理大学で開催され,シンポジウムで在日朝鮮人問題が取り上げられました。天理大学の学生寮で,民族差別によるリンチ事件が発生したことがシンポジウムのテーマ設定の背景にあったと思われます。


  • 1996/03/28 配信

    大阪市の「国籍条項撤廃」続報1

     今月21日「大阪市,国籍条項撤廃へ…?」でお伝えしていたとおり,大阪市が一般事務職など市職員採用試験の受験資格から「国籍条項」を撤廃する方針を決めたとのことについて,いくつか続報が入りましたのでお知らせします。

     昨日27日,大阪市議会財政総務委員会にて,この問題についての集中審議が行われました。以下,朝日新聞[28日付け]より質疑の抜粋を転載します。

    玉木信夫委員(自民)
    大卒者の採用試験の要綱は五月初旬に発表なので,十分な議論をする時間がないのでは。新年度からの実施にこだわるのか。

    磯村隆文市長
    思いとしては新年度からとしたい。ただ内容が微妙かつ重要なので,何がなんでも新年度からとは思っていない。

    北山篤委員(自民)
    国がまだ,結論づけていないのに率先して方針を出すことは理解しがたい。さきの委員会では「検討したい」だったが。

    磯村市長
    地方ごとの状況もあり,それぞれの自治体の立場でことを進めなければならない時期に来ていると判断している。

    待場康生委員(公明)
    足元の国際化が大切だが,議会との議論を積み重ねるべきだ。(国籍条項の撤廃後も)配属を制限するポストは何か。

    磯村市長
    徴税や建築確認などが公権力の行使にあたると考えている。

    松岡徹委員(社民)
    議会軽視で強い憤りをおぼえる。だが,国際都市をめざす動きを後退させてはならない。市民の関心は高まっている。他都市より早く結論を出す責任がある。

    磯村市長
    市議会にも納得してもらい,きちんと手順をたどり最終的に決めたい。ただ,長い間の懸案だった。だらだら時を過ごすわけにはいかない。

    石川莞爾委員(共産)
    地方公務員採用に国籍による差別があってはならない。国籍条項の対応は府下ではどうなっているのか。

    山田康彦・人事委事務局長
    府市では府と大阪市を除き門戸を開いている。

    福田賢治委員(新進)
    会派としては基本的に理解するが,内容や中身は議論を重ねないといけない。(公権力の行使などに携る者は日本国籍が必要という)自治省見解との差をどうするのか。

    磯村市長
    国の考えと整合性を持たせる議論をしてきた。ある程度,詰まった段階で議会に説明しようと考えていた。きちんと説明して,できるだけ早く進めたい。

     ということで,各委員の質問には「無視された!」という憤りが強くにじんでいます。これからもしばらくは紆余曲折がありそうですね。

     ただ,方向としては,門戸開放の流れをおしとどめがたいという印象が伝わってきますし,磯村市長の「それぞれの自治体の立場でことを進めなければならない時期に来ていると判断している」というくだり,自治省の言いなりになる必要はないとの覚悟も感じられます。


  • 1996/03/26 配信

    強制連行真相調査団が実態調査

     ここ数年,地道な聞き取り調査で大きな成果をあげてきた朝鮮人強制連行真相調査団をご存じの方は多いでしょう。真相調査団は各都道府県単位で組織されているのですが,東京都の組織が4月から都内在住の在日朝鮮人を対象に質問紙調査(アンケート調査のことです)を実施するとのことです。

     調査の目的は,在日朝鮮人が日本の植民地時代に受けた被害状況を調べるため。調査項目は,来日の時期や理由,空襲や被爆被害,徴用体験の有無,独立運動などにたいする弾圧被害など。報道を見るかぎり,都内の在日朝鮮人一世について世帯を単位とした全数調査を行うようです。かりに全数調査だとすると,これはすばらしい内容になることが予想されます。なにしろ,いまだかつてそんなものが実現したことはありません。最大の理由は,在日朝鮮人の名簿が手に入らないからです。

     神奈川県は1984年にサンプリング調査を実施しましたが,これは外国人登録原票の目的外使用を黙認してもらうかたちでようやく実現したものであり,その後,都道府県単位で外国人登録原票からサンプリングした調査はいっさい行われて(=許可されて)いません。また,全国規模でのサンプリング調査としては,HAN-A面にも掲載している「1993年在日韓国人青年意識調査」がありますが,これは在日本大韓民国民団(民団)の青年会が保有する名簿から対象者を抽出したものですので,年齢も青年層に限られているだけでなく,なにより朝鮮籍の在日朝鮮人が調査対象には含まれていません。

     つまり,全数調査がかりに実現しうるとすると,朝鮮籍者を中心とした名簿を所持する在日本朝鮮人聯連合会(総連)と,韓国籍の名簿を管理する民団とがそれぞれの情報を持ち寄ることになったということを意味します。調査の実現以前に,こうした事実そのものが大きな意味を持ちます。この点については,事実が確認されしだい続報を出したいと思います。

     東京都の在日朝鮮人は,世帯にして約5千軒。そのうち捕捉可能な数が3千軒とすれば,ボランティアによって運営されている強制連行真相調査団にも対応できないことはない数でしょう。ぜひ,中途半端にコストだけを浪費して使いものにならないデータとならないよう,周到な調査設計のもとにできるかぎり充実した調査を実現していただきたい。

     本日都庁で会見した文公憲事務局長は,「本来は日本政府の責任で行うべきだが,被害者が高齢化しており,今しか機会はない。調査結果は根本的な解決に向けた貴重な問題提起になると思う」と話しているとのこと[共同通信ニュース速報]。


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