在日朝鮮人をめぐる時事問題
Vol. 12


[ 配信記事一覧 ] [ HAN-A面 ] [ HAN-B面 ] [ HANBoard ]


  • 1996/04/18 配信

    国連人権委決議案に日本政府削除要求

     上記タイトルでの一連の報道は,毎日新聞のスクープから始まっていますね。11日の「日本が国連への反論文書配布」と同じく,福原直樹氏の記名記事です。

     ジュネーブの国連人権委員会は17日,日本の従軍慰安婦問題を含む「女性に対する暴力」に関する決議案をまとめましたが,その際,日本政府が決議文案の一部削除を強く要求していた――ということです。結局,日本の反抗は諸外国に受け入れられず,決議内容はそのまま19日に総会の総意として採択される予定とのことです。

     同委員会の報告書は,周知のとおり,「女性に対する暴力」をテーマに特別報告官クマラスワミ氏が委員会に提出したものです。家庭内暴力を取り上げた本論と,従軍慰安婦問題を取り上げ,日本政府に国家賠償のほか元慰安婦への謝罪文送付などを勧告した付属書(→参照)から構成されています。

     以下,毎日新聞に追随した他社の報道にない部分だけを引用します。

     参加各国の証言や毎日新聞が入手した決議文によると、「報告官の業績を歓迎し、報 告書(本論と付属書)の存在に留意する」という表現で付属書も含めて評価する文言が 入った。非公開会議で文案が検討された際、日本は従軍慰安婦問題について触れた付属 書に言及しないように要求。決議文に記載された報告書の国連登録番号のうち、付属書 の番号だけを削除するよう強く求めた。

     西側諸国から「異例の要求でのめない」という指摘がされたほか韓国や中国、朝鮮民 主主義人民共和国(北朝鮮)など「被害国」も強く批判。特に韓国は「もし付属書番号 を入れないならば総会で表決するしかない」と強硬に反対。結局、日本の抵抗は通らな かった。

     決議には「性的奴隷など、戦争時におけるすべての女性の人権侵害を非難する」とし て、間接的に従軍慰安婦を批判する文言も入った。「国家による補償問題は解決済み」 との立場から報告書に反論してきた日本政府に新たな対応を迫るものとも受け取められ そうだ。

     次に,やや政府に配慮した文体になっている時事通信から引用します。

     国連人権委員会は……従軍慰安婦問題を扱ったクマラスワミ特別報告官(スリランカ)の報告書「女性に対する暴力」について、「報告官の業績を歓迎し、報告(全体)に留意する」とする決議案をまとめた。

     日本政府筋は「留意という表現は報告書の存在を認めただけ。報告書の主体はあく までも家庭内暴力にある。『アジア女性基金』計画は各国から高い支持を得られた」 と述べ、同基金による慰安婦問題の最終決着を急ぐ方針を確認した。

     「留意」は国連の評価尺度としては支持、称賛、歓迎の次にくるものだが、日本政 府の働き掛けは理解を得られなかった。また、韓国などが求めた日本政府に対する勧 告への言及も見送られた。


  • 1996/04/13 配信

    またもや在日朝鮮人生徒への暴行事件多発の兆し

     在日朝鮮人の生徒が暴行を受ける被害が多発しているとして,在日朝鮮人総聯合会が本日13日,警視庁に捜査の徹底と再発防止の措置を求める申し入れ書を手渡したとのこと。

     共和国を批判するような報道が起こるたびにこうした暴行事件が発生してきましたが,今回はおそらく,米ドル偽札事件に朝鮮民主主義人民共和国が関与したとの疑惑が報道されていることに刺激されたものでしょう。何が刺激されたのかって? 言いたくもないですね。

     今回の具体的な事件としては,総連東京都本部によると以下のようなものがあるらしい。

     朝鮮学校の生徒は,日常的にも暴力の対象になることはありますが,この種の全国的かつ集合的な暴行事件としては,これまで1963年5月,70年3〜6月,71年10月,89年10月〜11月などに類例があります。89年のケースは,「パチンコ疑惑」などという愚にもつかない“疑惑”が国会やマスコミで取り上げられたことに影響を受けて,制服のチマが切られるなどの暴行が頻発したため,ご記憶の方も多いでしょう。


  • 1996/04/11 配信

    日本が国連への反論文書配布

     「<スクープ・従軍慰安婦>日本が国連への反論文書配布」というタイトルで,毎日新聞ニュースの速報が流れてきました。ジュネーブの福原直樹特派員による記名記事で,元従軍慰安婦への国家賠償を求めた国連人権委員会の報告書にたいして,日本政府が同委員会の構成国に配布していた反論の非公式文書の内容などです。

     国連人権委員会の報告書は,2月9日にお伝えしたとおり,日本など各国が同意し任命された特別報告官のクマラスワミ氏(スリランカ)が作成したものです。以下,記事より引用します。

     毎日新聞が入手した日本政府の文書は、これに対する「反論書」として3月、アジア、欧米など20カ国以上に配布された。

     文書では「旧ユーゴなどでの女性への暴力が問題になっている今、最も重要な問題のように従軍慰安婦を取り上げた」「報告書の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の聞き取り調査は、報告官自らではなく国連が行ったもので、疑問が残る」「50〜60年前の問題を正確に調査するのは難しい」などとしたうえで「事実関係の立証に誠実な努力がなされておらず……報告は一方的で不正確。採択されれば委員会は信頼性を失う」と断言している。

     さらに文書は「客観的、公正であるべき報告書の基準に見合わない」と報告官への個人攻撃ともとれる内容とともに、委員会に報告書の否決を求めている。

     日本は、3月下旬になって、約50ページあったこの文書を大幅に削除、問題部分を外した。「従軍慰安婦問題は国際法的に解決された」として昨年創設された「女性のためのアジア平和国民基金」への理解を求める約20ページの文書を国連に提出している。

     当地の日本政府筋は、問題の文書について「日本政府の立場を説明する非公式資料としてジュネーブ、東京で各国に個別に配り理解を求めた。しかし報告官への個人攻撃と受け取られる部分もあり、大幅に削除して国連に提出した」と説明している。一方、文書を受け取ったアジアのある高官は「国連が任命した報告官への個人的中傷になる」と指摘している。

     ということで,なにぶん,その非公式文書の詳細が分かりにくいためコメントしづらいのですが,50年前の問題を蒸し返すなとか,事実関係の立証に誠実な努力がなされていないとか……「厚顔無恥」というのはこういう態度を言うのではなかったでしょうか。

     日本政府がこの50年間に,軍事性奴隷という国家的犯罪の実態の「立証に誠実な努力」してきたというのなら話は別ですが,事実が表面化してからも長い間,あれは民間の業者が勝手にやったものなどというイイワケに終始してきたことをどう考えているのでしょうか。

     事実が明らかになるにつれて,軍の介入(それでも政府・内閣の決定ではないつもりらしい)があったことをしぶしぶ認めざるをえなくなりましたが,内部資料の調査は一度もなされていません。いや,探したことは探したらしいのですが,厚生省のHIV資料と同様,「見つからない」ということだそうです。


  • 1996/04/10 配信

    長崎原爆資料館の加害展示

     福岡県の小学校の場合,修学旅行の行き先はだいたい長崎か広島です。小学校の修学旅行としては手頃な距離にある名所だということなのでしょうが,その際,かならず原爆資料館を訪れます。その長崎原爆資料館ですが,建て替えのために今月1日に新たにオープンしました。従来にくらべて展示面積が大きくなっているだけでなく,戦争中の日本の加害行為に関する展示を追加している点が大きな特徴です。

     この加害行為展示については,1月に企画が報道されて以来,反発する手紙や電話が寄せられるようになり,地元経済界や自民党市議などから中止の圧力が加えられ展示内容の変更を余儀なくされるなど,さまざまな紆余曲折があったと言います。

     しかし,オープン直前(前日?)になって,あらためて加害責任を明確に示す展示内容に差し替えるなどの攻防のすえ,当初の目的に添ったかたちで加害展示が実現しているようです。長崎市担当者の勇気と機知が賞賛されてしかるべきでしょう。これで原爆資料館の目的である,「原爆の非人道性と核兵器廃絶の願いを伝える」ということについて,いっそうの説得力が出てきました。

     これまで,外国から原爆資料館を見に来た人の中には,一部とはいえ,「長崎も広島も,帝国日本の軍事基地だったんでしょ?」「アジア各地でひどいことをしたんですからねぇ」といった反応があったと聞いています。それはそれで事実なのですが,かといって,それで原爆の非人道性が許容されたり,免責されるものであるはずがないでしょう。あれを見てなおかつ,「しかたがなかったのだ」と思えるとしたら,人間性を疑わざるを得ません。

     各種の意識調査によれば,他の地域にくらべて長崎・広島市民は明らかに高度な反戦意識を持っています。しかしその一方で,とりたてて長崎・広島市民が加害責任の自覚を持っているわけではないということも明らかです。“独りよがりの被害者意識”などとあらぬ批判を受けぬよう,今回の資料館の企画のように,より広範な視野から核兵器廃絶をうったえていくことが望まれます。


  • 1996/04/07 配信

    地方選挙権意見書採択の現状

     昨年95年2月に,最高裁判所が「定住外国人への地方選挙権付与は合憲」との判断を示してから,日本全国の地方議会で,定住外国人の地方選挙権を求める意見書を採択する動きが活発化しています。今年96年初頭にはじめて1000の大台を突破したのですが,その後も採択は相次ぎ,4月3日の時点で1190議会,全国自治体の36.3%にのぼっているとのこと(在日本大韓民国民団中央本部の集計による)。

     自民党と新進党の一部で,外国人に地方参政権を付与することにたいして根強い反対があるようですが,こうした地方からの突き上げにたいして,いつまで無視を続けることができるのでしょうか。

     都道府県単位で見ると,枠内全自治体の9割以上が意見書を採択しているのは,神奈川県(100.0%),福岡県(96.9),奈良県(95.8),大阪府(95.6),長野県(90.9%)。

     逆に,1割未満しか採択されていないのは,静岡県(1.3),長崎県(5.0),愛媛県(5.6),和歌山県(5.9),佐賀県(6.0),熊本県(6.3),岐阜県(7.0),沖縄県(7.4),山梨県(9.2),茨城県(9.3)。静岡県では際だって採択率が低いですね。

     おそらく毎月ごとに集計しているはずですから,いくつかの変数を導入して計量的に分析すれば,どういった要因が意見書採択を促進しているのか,逆に何が阻害しているのか,ある程度分かるはずなんですけどね。でも,ざっと流れを見た印象では,意見書採択を呼びかける運動を担っている民族団体が弱い地域で採択率が低いという傾向が見られます。そういった状態ですから,傾向を分析しながら効果的に運動を展開するという以前の段階なのでしょう。

     ところで,よくマスコミなどで「地方選挙権」のことを「地方参政権」と表現していますが,これは正確な表現なのでしょうか。僕が中学校の「公民」で習った知識によると,参政権というのは,選挙権(および被選挙権)の他に,公務員の罷免権などを含む,もう少し広い概念だったような気がするのですが……。「選挙権は認めるけど,被選挙権は認めない」とか,「選挙権と被選挙権は認めるけど,公務員の罷免権は認めない」などといういびつな門戸開放になったら,どうするのでしょうか。また同じような意見書採択をくり返すのでしょうか。

     この問題で問われているのは,日本の「正義」のあり方のはずです。「参政権」の枠組みをどうとらえるかということが,根本的に問い直されなければならないはずです。そういった検討なしに,温情主義で,選挙権だけは与えてはどうかなどという議論には矮小化してほしくないですね。各自治体の意見書の内容を見るかぎり,そうではないことを信じていますが。


    [ 配信記事一覧 ] [ HAN-A面 ] [ HAN-B面 ] [ HANBoard ]