「江藤妄言」ふたたび
95年11月に「(植民地支配において)日本はいいこともした」などと発言し,「妄言」と糾弾され総務庁長官を辞任した江藤隆美氏が,ふたたび強烈な問題発言で物議を醸しています。(→関連1,関連2)
13日に北九州市内で講演したさい,朝鮮半島の植民地支配について「国と国が条約を結んで決めたことのどこが侵略なのか。言葉は悪いが町村合併といかほどの差があるのか」と発言。さらに教科書の歴史記述についても,「侵略とは武力による占領だ。いったい日本がどこを侵略したというのか。なぜ教科書に載せなければならないのか」など。
また,江藤氏は同日夜、共同通信に対し「町村合併ですら血で血を洗うような抗争がある。一つの国がなくなり歴史が途絶える時、国を挙げて賛成するわけがない。しかし、当時の韓国政府はそういう選択をした」と述べ、当時の日韓併合条約を正当なものと主張。加えて,歴史教科書の従軍慰安婦についての記述についても「いつどこで日本の官憲が強制連行したという事実が明らかになっているのか」と疑問を示したとのこと。
この江藤氏の発言にたいして,「言葉使いはともかく,内容は間違っていないのでは?」と思われる方は多いでしょう。なぜなら,歴史の授業で「1910年=日韓併合」という事実は教えられていても,その法的な問題までは教材にのらないためです。
この点については,「日韓併合の基礎知識」を参考にしてください。日韓併合は,江藤氏がいうように「国と国が(正当に)条約を結んで決めたこと」ではないのです。
国籍条項で知事・市長アンケート
時事通信社が,一般事務職採用の国籍条項について知事・市長アンケートを実施した結果を,1月4日付けで公表しています。まず目立つのは高知県。「97年度から任用に制限を付けず、一般事務職に外国人を採用」と回答しており,任用に制限を設ける川崎市方式への転換を検討していたとされる最近の報道から,再び開放姿勢に転じています。まぁ,あくまで首長へのアンケートということですが。また時期未定ではありますが、群馬県,大阪市、沖縄県が国籍条項の原則ないし全面撤廃をそれぞれ検討しています。
そして神奈川県と横浜市は,このアンケートでの回答後,それぞれマスコミをつうじて門戸開放の指針などについて積極的に解説しています。神奈川県は,徴税などの公権力の行使などに当たらない職種にかぎり,一般職員の最上位である部長級までの昇進を認める考えを表明しました。横浜市は,採用にあたっての国籍条項は全44職種の7割にかぎって撤廃,昇進については「決裁権を伴わないポストであれば制限しない」ということで,これは前回お伝えした神戸市の方針とよく似ています。
以下に公表結果を再録します。
過去一ヶ月間の動向
●外国人の地方公務員採用について
なお,奈良県は已然として消極姿勢に終始していますが,(政令指定都市ではないため自治省の監督外である)奈良市の大川市長については課長級以上への管理職登用を含めて国籍条項を撤廃する意向が伝えられています。そう,政令指定都市と都道府県以外では,国籍条項をすでに全面撤廃している自治体だって多いのです。
ところで,千葉市の松井旭市長は,この問題について「帰化してくれれば問題はない」(11月25日の記者会見)と発言。在日本大韓民国民団などの抗議にたいして,11月29日には「このたびの発言は不適切であり,撤回する」と文書で回答したとのことです。なんとも日本の政治家らしい態度ですね。もっと毅然とできないものでしょうか。たいした説明もナシにすぐに撤回するぐらいなら発言しない深慮,発言したことには議論をもってケリをつける勇気と誠意がほしいものです。
●教科書問題について
この問題の背景には,「侵略否認派議員らが巻き返しにやっき」でお伝えしたような,自民党および新進党右派の揺り戻し活動がありますが,問題として表面に出てくる直接のきっかけになったのは,いくつかの具体的なできごとでした。
たとえば――
12月2日,藤岡信勝氏(東大),西尾幹二氏(電通大),小林よしのり氏ら9名によって結成された「新しい歴史教科書をつくる会」が,各界から78名におよぶ賛同をとりつけて,中学検定教科書からの「従軍慰安婦」の項の削除要求などを行いました。
同日,ジャーナリストの桜井よしこさんが10月に行った横浜市教育委員会主催の教員研修の講演で,「日本軍による強制連行はなかった。教科書で教えられる子供はたまったものではない」などと発言し,「かながわ人権フォーラム」が市教委に抗議したことが明らかになりました。
また,岡山県の自民党県議団の主導によって,同県議会が本日19日の本会議で,慰安婦問題などの記述を中学教科書から削除するよう求める陳情を賛成多数で趣旨採択しました。
これらの動きにたいして,ジャーナリストや弁護士らの女性グループが18日,約700人の賛同をえたうえで,「勇気を持って名乗り出た元慰安婦の女性たちの名誉と尊厳を再び傷つけるものだ」と,抗議のアピールを発表しています。
また,人権救済活動に取り組む個人、団体のために横浜弁護士会が創設した「横浜弁護士会人権賞」の第1回受賞者に選ばれたカラバオの会が、「従軍慰安婦の強制連行はなかった」などと講演で発言したジャーナリストの桜井よしこさんが選考委員に含まれていることに反発し、本日19日、受賞を辞退しました。
――岡山県のケースはともかくとして,「新しい歴史教科書をつくる会」について特筆すべき特徴は,必ずしも右派に限定されない広範な賛同をとりつけている,ということです。一部右派の言動にすぎなかったこの種の活動が,やや一般に浸透しつつある印象を受けます。彼らの主張は,私からみるかぎり非常に幼稚なものではありますが,ある種の心情的な共感をよぶ部分を持っているということなのでしょう。
教科書の内容はともあれ,多くの日本人の歴史観自体に自虐的な側面があるというのは確かだと思われます。だがそれは,教科書の内容などという矮小な問題ではなく,子細な検討抜きに盲目的に日本の国家主義だけを悪だと決めつけてきた戦後の教育全体にかかわる問題であり,徹底的な処理をのらりくらりと先延ばしにしながら口先だけで謝罪をくり返してきた日本政府の戦後処理姿勢全体にかかわる問題であり,そして何より,それらを下支えしてきた日本人のエートス(性根)そのものにかかわる問題だと考えます。
日本人の自虐史観を批判するのであれば,スジやケジメをはっきりさせないアイマイな日本人的心性をこそ糾弾しなければならないでしょうに。今も諸官庁に眠っているとみなされる慰安婦関係の書類を隠し続け,真相究明を行わない卑怯な態度をこそ糾弾しなければならないでしょうに。一部のイデオローグにのせられ,教科書の記載を削除するかどうかなどという問題に議論が矮小化されるとしたら,非常に残念なことです。
●小平市の原票開示問題について
(注)−−−は設問に対し明確な回答がなか
った
大 分 当面は一般事務職以外
宮 崎 現段階で見直しは考えていない
鹿児島 −−−
沖 縄 制限なしの国籍条項撤廃を検討
札幌市 −−−
仙台市 −−−
千葉市 −−−
横浜市 採用機会の拡大を検討
川崎市 −−−
名古屋市 当面は一般事務職以外
京都市 −−−
大阪市 制限付き採用を検討
神戸市 97年度から制限付き採用の導入を検討
広島市 −−−
北九州市 現行採用方式変える考えはない
福岡市 当面は一般事務職以外
静 岡 当面は一般事務職以外
愛 知 当面は一般事務職以外
三 重 職種の拡大を検討
滋 賀 当面は一般事務職以外
京 都 専門職を中心に検討
大 阪 人事制度の工夫が可能かを検討
兵 庫 制限付き採用が妥当かを検討
奈 良 −−−
和歌山 当然の法理に触れない範囲で拡大に努める
鳥 取 当面は一般事務職以外
島 根 当面は一般事務職以外
岡 山 −−−
広 島 可能な限り拡大
山 口 内部の検討組織で検討する
徳 島 −−−
香 川 −−−
愛 媛 今後の推移を見ながら検討
高 知 97年度から制限なしの国籍条項撤廃を検討
福 岡 −−−
佐 賀 当面は一般事務職以外
長 崎 当面は一般事務職以外
熊 本 当面は一般事務職以外
北海道 当面は一般事務職以外
青 森 一般事務職以外で検討
岩 手 当面は一般事務職以外
宮 城 当面は一般事務職以外
秋 田 当面は一般事務職以外
山 形 基本原則を踏まえつつ採用機会を拡大する
福 島 当面は一般事務職以外
茨 城 当面は一般事務職以外
栃 木 新たに示された見解に配慮しつつ慎重に検討
群 馬 当面は一般事務職以外。将来的には任用制限を付けた見直しも検討
埼 玉 今後の対応を検討中
千 葉 可能なものは拡大
東 京 当面は一般事務職以外
神奈川 97年度から任用制限付きの採用を検討
新 潟 当面は一般事務職以外
富 山 当面は一般事務職以外
石 川 当面は一般事務職以外
福 井 当面は一般事務職以外
山 梨 当面は一般事務職以外
長 野 当面は一般事務職以外
岐 阜 当面は一般事務職以外
白川自治相の姿勢(関連記事1,関連記事2)に影響を受けて,門戸開放の流れは着実に進んでいます。たとえば,高知県は全面撤廃を見直し,川崎市と同じく昇進と職種を制限する方向で調整していると聞きます。高知県は人事委員会にしばられる以上,現時点での妥協はしかたがないというところでしょう。神戸市も,部下がいない「スタッフ職」については局長級までの昇進を認める考えだということです。開放姿勢が伝えられる大阪市については,自治相と協議しつつ慎重に基準を策定するとのことです。
「教科書問題」という固有名詞がしだいに定着しつつあるようです。80年代初頭の「教科書問題」とはちがって,「子供たちが勉強する教科書が自虐性に富み過ぎている」「自分の国を悪くばかり記述しており、若い人が学べば学ぶほど日本がいやになってしまう」などという理由から,従軍慰安婦などにかかわる記述を教科書から削除しようとする活動が争点になっています。
これについてはHANBoardでの議論が先行しましたが,小平警察署が小平市対し、同市在住の外国人全員の登録原票を閲覧できるように要請し、小平市でもこの15年間それに応じていたとのことです。小平市には朝鮮総連系の朝鮮大学校があり,小平警察署ではその関係者の流出入を把握する目的だったと思われます。外国人登録原票には非常に高度なプライバシー情報が記載されており,明白な人権侵害にあたります。