12.帰化とは何だろう

 学年はじめ、家庭訪問などで民族・国籍の問題などをなげかけたとき、「私たちは帰化しようと思っているから、その問題には触れないでください。」とか、「本人が大きくなってから帰化するかどうかは、考えます。今はそのことにはふれないでください。」などの言葉が返ってくるときがあります。そのことをどう受け止めればいいのか考えてみましょう。
 
 
(A)帰化の意味

 日本における帰化とは、外国人が日本国籍を後天的に取得するものですが、特に本人の志望と国家の許可による個別的な国籍の取得をいいます。

 戦後のドイツでは、戦後処理の一つの方法として在ドイツ国内のオーストリア人に対して国籍の選択権を与えたという事実があります。また、イギリスにおいては、本国と新独立国との間には、一種の二重国籍が認められ、イギリス本国では、「英国連邦市民」という地位を持ち、決して外国人としては扱われませんでした。

 しかしわが国では、アメリカの占領支配を終える1952年の「サンフランシスコ平和条約」時に在日韓国・朝鮮人の国籍を一方的に剥奪したという経緯があります。このときに新たにできた法律が「国籍法」といわれるものです。ここから戦後の排外主義が始まります。

 帰化を許可するか否かは、国家の絶対的自由裁量とされ、外国人には、帰化の権利というものがなくあくまで国家が国益を基準として決定します。

 しかし、帰化行政の対策のほとんどは、在日韓国・朝鮮人が主な対象であり、また日本との歴史的背景を考えたとき、一般的な帰化とは違う側面を持っていることも考える必要があります。

 日本に帰化するときには次の条件があります。
 

  1.  居 住 用 件
     5年以上継続して日本に居住していること(日本で生活できる順応期間とし、全人格的評価を行い、日本に住む意思を確認できる期間を5年としています。)
     
  2.  能 力 用 件
     20歳以上(日本国家への忠誠ができる年齢としています。20歳未満の時は、親権者が申請します。)
     
  3.  素 行 用 件
     普段の行いがどうであるか(日本の安全秩序を害するおそれはないか、道路交通法違反容疑はないか、納税はきちんとできているか、出入国管理・外国人登録法違反はないか、生活習慣はよいか)
     
  4.  生 計 用 件
     経済的に自立しているか(公共の負担とならないもので、生活保護対象者は認められない)
     
  5.  重国籍防止用件
     日本国籍取得に当たっては、他の国籍は捨てること。
     
  6.  国益公安用件
     日本国憲法下での破壊活動等を主張しないこと
     

 日本の帰化行政の本質には、在日韓国・朝鮮人で生きるより日本人になって生きなさいという同化政策(日本人にしてしまう政策)があります。

 また、帰化についての手続きも大変煩雑なもので、帰化申請をする人々は、上記のような用件がすべて満たされているかどうかが審査され、申請が受理されるまで約1〜2年ほどの長い期間を耐えねばなりません。

 また、提出しなければならない書類の種類も大変多く、われわれには、聞き慣れないものがたくさん出てきます。

 【申請者が作成する書類】
 (1) 帰化許可申請書 (2) 親族の概要を記載した書類 (3) 帰化の動機書 (4)履歴書 (5)宣誓書 (6) 生計の概要を記載した書類 (7) 事業の概要を記載した書類 (8) その他

 また、申請者の本国や日本の役所から取り寄せなければならない面倒な書類がたくさんあります。
 

  1. 外国人登録済証明書
    出生地、上陸年月日、在留資格、在留期間、申請5年間の居留歴などが証明されたもの。
     
  2. 国籍を証明するもの
    本国で発行された戸籍謄本、またパスポートを持っている者は提出
     
  3. 親族関係を証明する書類
    本国の戸籍・除籍謄本(全部謄本)
    また、親族に日本人がいる場合は、日本の戸籍・除籍謄本(全部謄本)と住民票
    申請者や申請者の父母などが、日本の市区町村役場へ戸籍に関する届け出をしている場合は、戸籍届書記載事項証明書が必要となります。
    その他必要と認められた書類について提出する義務を負います。
     
  4. (4)納税を証明する書類
    給与所得者は源泉徴収票などを提出し、自営業者は、所得税、法人税などの納税証明書が必要です。
 

(B)帰化に対する基本的な考え方

 在日韓国・朝鮮人が、帰化(日本国籍を取得すること)しようとするのは、本心から願ってするのではないということです。理由はなんであれ、自分の民族を捨てて、日本国籍を取得しなければ、生きていけないという厳しい日本の現実があるからに他なりません。またたとえ、帰化して日本国籍を取ったとしても、厳しい現実はあります。在日韓国・朝鮮人からは、最悪の場合、“民族の裏切り者”としてみられ、一線を引かれ、日本人からは、日本国籍をもっていても、韓国・朝鮮人として差別され、本質的な問題解決にならない根深い問題があります。

 そのような在日韓国・朝鮮人の保護者に対し、わたしたちが、この日本の厳しい現実を認識して話す中で、必ずしも親自身が全て、納得して“帰化”という言葉を口にしているのではないということが分かってくる場合もあるのです。このことを手がかりに、子ども達にとってよりよいアドバイスを考えていきたいということを、わたしたちが示していけば、親の方が拒否することは、数少なくなると思います。

 「帰化する」という親の姿勢に対しては、次の点を知っておくことが大切でしょう。

  1. 帰化をせざるをえないのは、日本に在日韓国・朝鮮人として住みにくさの表れを示す以外のなにものでもないということ。
     
  2. 帰化をして、日本国籍を取得しても、朝鮮民族であることにはかわりはなく、日本において、互いの民族の違いを認めあって、共に生きていくことが大切であること。
     
  3. 「民族」の違いを認めようとしない日本社会のあり方に大きな問題があること。
 

(C)帰化した生徒に対して

 また、担任として、生徒の帰化の事実を知ったときは、次の点を知っておくことが大切でしょう。
 

  1. 生徒の帰化の事実を担任が知ったときは、生徒に対しても十分な配慮が必要でしょう。たとえば、帰化の事実を他の生徒が知るような発言などはしないなど・・・。
     
  2. 帰化したことを子どもは知らず、生まれたときから日本人と思って大人になり、その出自を知って自分の親にあたったり、苦悩する生徒がいること。
     
  3. 本来、国籍と民族とは違うものであり、日本国籍を取得しても民族の誇りを持ち続けている人もいること。たとえば、日本国籍になり、自分の本名や民族的習慣を大切にして生きている人々もいる。(株式会社ソフトバンク社長の孫正義さんなど)
     
  4. 日本国籍を取得しても、すべて民族としての問題が解決するわけではない。
     
  5. 帰化したとしても依然、朝鮮人として就職や結婚にも差別の現実があることを認識し、機会があるごとに親と話していく姿勢は大切でしょう。

インデックスに戻る | 一つ前に戻る | 次に進む