7月末ともなれば、白夜のフェアバンクスとはいえ、夏の盛りがすぎて朝晩の冷え込みが厳しくなってきます。毎日少しずつ日照時間が短くなって、日没後は本を読むのが少しつらくなってきます。
そんなある日、逗留先のご近所さんたちとお酒を飲みながら雑談をしていたところ
「そろそろ冬が来るね」7月の末ですよ。最初はジョークかと思ったのですが、みんなしみじみとした表情でうなづいているじゃないですか。フェアバンクスの夏は6〜8月のわずか3ヶ月間。それ以外は冬です。短い短い夏の3分の2がすでに終わって、あと1ヶ月もすれば冬が来るのです。
「あと二週間でオーロラが始まる」白夜に隠れて見えなくなっていたオーロラが始まるということは、美しいけれどもつらく厳しく暗い冬がまた到来することを意味しています。
「一週間もすれば強いオーロラは見えるようになるかな」
「ファイアー・ウィードが一番上まで咲いたら1週間後に初雪が降るっていうよね」ファイアー・ウィード(和名ヤナギラン)はアラスカでもっともポピュラーな花です。写真は7月はじめに撮ったものなのでまだ下のほうしか咲いていませんが、7月末にはもう上のほうに2〜3の花芽しか残っていません。
「火の雑草」という野卑な名前を持ってはいますが、人々はたいへんこの花を愛しています。名前の由来は、火事のようにいっせいにマゼンダ色の花が野に咲くから、とか、山火事の後いちばん最初に咲く生命力の強い草だから、など諸説あります。
「今年はベリーが豊作だったね」捕食関係にあるウサギと山猫の数の相関はよく知られていますが、ウサギとベリーの関係は初耳でした。
「雨が多かったせいかな。」
「そういえばデナリ・ナショナル・パークのガイドが今年はウサギが多いっていってた」
「へー、ベリーがよく採れる年はウサギが多いって本当なんだね」
フェアバンクスでは、調査に答えてくれた方が、取れたてのブルーベリーのジャムをくれたり、野菜やフルーツをくれたり、謝礼を要求するどころか逆にぼくをもてなしてくれることが少なくありません。みんなどこか少し粗っぽいけれども、やさしくてフレンドリーです。厳しい自然に対処するためにみんなで協力しあって生きる知恵を持っています。

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