この大学に着任して驚いたことは他にもたくさんあります。たとえば、当時、レポートに盗用がたいへん多かったこともその一つです。
盗用といっても、かならずしもウェブの資料をそのまま印刷するような悪質なものではありません。引用箇所と地の文が区別されていないとか、引用しておきながら出典を明記しないといった、論文の作法が身についていないタイプのものが非常に多かったわけです。
(ただし、翌年から非常勤であちこち教えに行くようになって、他の大学でも同等かそれ以上に多いとすぐに気づきましたが。ちなみに、一番ひどかったのは「関関同立」の中の一校でした。あそこは悪質なものも多かった。)
着任して最初の試験が終わると、すぐに盗用禁止の内規を作成し、学生たちに周知しました。これが、僕がほとんど初めてマジメに手がけた校務だったような気がします。
学生は提出するすべてのレポートにおいてプレジャリズム(plagiarism: 剽窃、盗用)を犯さないようにしなければならない。プレジャリズムは学問に対する重大な罪であり、学生がもっとも犯してはならない悪質な不正行為の一つである。プレジャリズムとは、故意に、あるいは不注意で、出典を示さずに他者の論理、表現、意見などを借用し、結果として自分自身のものと偽ることをいう。ちなみに、プレジャリズムの語源はラテン語で「誘拐犯」である。なつかしい。初めて盗用禁止の内規を会議に諮ったときに提出した資料の書き出しです。翻訳調でカタいですね。プレジャリズムに対する無知は、プレジャリズムを犯したことの弁解にはならない。自分のレポートにプレジャリズムがあるかどうかはっきりと分からないときは、提出するまえに教員に相談しなければならない。
以後、「レポートの書き方」を含む授業を必修化して論文の作法を教えながら、4年間の内規運用で十分に制度が周知できたところを見計らって、学部改組と同時に学則にルールを明記しました。「盗用、カンニングなどの不正行為は試験期間にさかのぼって停学、そして試験期間の単位はすべて認定しない」という内容です。ようするにカンニングと同じ扱い。
その結果、今では、ウチの学部で盗用が起こることはなくなりました。おそらく、全国でもっとも盗用の少ない学部でしょう。ちょっとした自慢です。
ところで、おとなり韓国でもこんなニュースが。
厳しくなったソウル大学の「盗作へのムチ」 (東亜日報日本語版)

私が大学で,勉強した時,論文の書き方についてまったく教えてもらわなかった。
だから,引用部位や引用文献についての書き方が中途半端だった。
論文の書き方やそのルールは,大学ではなく,学芸員や博士論文をとった先輩から教えてもらった。
アメリカの「論文の書き方」の本の存在をその時に知った。
今でも,私の母校では論文の書きかたについての教育はないのではないだろうか。
いらっしゃいませ、EKさん。
ぼくも論文の書き方なんて、学部でも大学院でも、授業では教えてもらったことがありません。あ、日本でのことですよ。
実質的に指導してくれたのは、助手であったり、先輩であったり。EKさんと同じく、インフォーマルな対人関係を通じてのことでした。
大学生以上なら書けて当たり前、というカリキュラムでしたね。卒論指導のための授業すらありませんでしたし。
ちなみに、アメリカでは作文の授業が重視されていて、中学校くらいから論文の書き方の基礎を学んでいきます。大学でもAcademic Writingという作文の授業が必修になっていて、論文の書き方を体系的に学んでいます。
EKさんがめぐり合った書籍は、おそらくそういう授業での教科書でしょう。
ただ、日本でも、少しずつ論文の書き方を教える大学は増えてきていまして、ウチの学科でも、アカデミック・ライティング(1〜2年必修で8単位)という日本語の授業をやっています。
当の学生たちには、恵まれた環境で学んでいるという自覚はないようですけど(笑