橋やダムには「ロマン」があります。大自然を相手に知恵と体力と勇気を試される非常に危険な大仕事ですので、たいていの橋やダムにはヒーロー譚があったりするものです。これがいわゆる「男のロマン」。建築後はその機能美や夜景の美しさから若い恋人たちをひきつけるものです。これは...なんのロマンだろう。
ともかく、マンハッタン島には東西に大きな橋がいくつかかかっていて、やはり、そのすべてにちょっとした逸話があります。天才ローブリング親子が名声と人生をかけたブルックリン橋。フラッター現象で崩落するという大惨事で世界に聞こえたタコマ橋、等々。

ニュージャージー州のフォート・リーとマンハッタンを結んでいるジョージ・ワシントン・ブリッジ(George Washington Bridge: 略してGWB)もそのひとつ。ル・コルビジェをして「世界で最も美しい橋」といわせた建築です。
7本ものハイウェイが集中するロケーションですので、むかしから激しい交通渋滞の名所で、1962年にはもう一本の橋板を通して上下二層構造に改築するという離れ業をこなしたこともあります。上下あわせて14車線の橋は世界唯一らしい。それでも渋滞はひどいですけどね。
この橋のなにが美しいと評価されたのかというと、スチールがむき出しの色合いや、トラス構造の骨組みをむき出しにした鉄橋です。写真を撮ったときは補修中だったのでカバーがかぶせてありますが、本来はそういう構造なのですね。(テロ対策で、いちおう撮影禁止らしい)
ル・コルビジェいわく「無秩序な都市にあって唯一の気品の源である」とのこと。たしかに、現代建築の巨匠が好みそうな、機能主義的な様式美はあるといえるかもしれません。個人的には、美しいというよりむしろ無機的な威容が冷たいニューヨークにぴったりだと思いましたが。
でも、G.W.ブリッジに独特な景観を与えているトラスの鉄橋ですが、本来の設計では単なる骨組みであって、表面には大理石かなにかを張ることになっていたそうです。予算不足で裸のままの設計に変更されただけだったのですね。それがむしろ現代建築らしい無骨な機能美につながったというのですから、面白いものです。
ちなみに、G.W.ブリッジの東側は「ワシントン・ハイツ」という地域です。この一帯には、「ワシントン」や「フォート」(砦)と名のつく地名がいくつかあります。それは、アメリカがイギリスからの独立をかけて戦ったころ、ちょうどこの辺り、ハドソン川の両岸にジョージ・ワシントン将軍が砦を築いたことに由来するそうです。

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