標準化と相性の悪い学問

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 各学問領域で標準カリキュラムを作成しようという話の続きです。

 世の中には、どうしても標準化とは相性の悪い学問というものがあります。ぼくの専門である社会学もその一つですし、国際関係論などもそうでしょう。地域研究なんかも困りますね。ようするに、学問の射程が広すぎて、"誰もが知っているべき知識"というものを定められないのです。

 文部科学省としては、だからこそ、より精度の高い学習のために、学習の指針となるべきコア・カリキュラムを作成すべきだと主張しているのでしょう。でも、社会学なんかは、その学問の多様性と不定性そのものが学問的アイデンティティを構成している面もありますので、標準化しようという動きに対して、学問的良心から反発する研究者も少なくはなかろうと思います。

 まぁ、それでもなんとか標準化してみようという話になったとします。ちなみに、下の表は、日本社会学会に入会するときに選択する研究リストです。

1.社会哲学・社会思想・社会学史2.一般理論
3.社会変動論4.社会集団・組織論
5.階級・階層・社会移動6.家族
7.農山漁村・地域社会8.都市
9.生活構造10.政治・国際関係
11.社会運動・集合行動12.経営・産業・労働
13.人口14.教育
15.文化・宗教・道徳16.社会心理・社会意識
17.コミュニケーション・情報・シンボル18.社会病理・社会問題
19.社会福祉・社会保障・医療20.計画・開発
21.社会学研究法・調査法・測定法22.経済
23.社会史・民俗・生活史24.法律
25.民族問題・ナショナリズム26.比較社会・地域研究(エリアスタディ)
27.差別問題28.性・世代
29.知識・科学30.余暇・スポーツ
31.環境32.その他

 従来の日本における社会学教育では、1と2をくまなく学んだ上で、21の知識もできる範囲で習得しながら、あとはそれ以外の個別分野(連字符社会学といいます)をできるだけ幅広く学習しなさい、という理想でやってきたと思います。

 ただ、それはあくまで理想なのですね。

 1と2をくまなく学ぼうとすれば、それだけで20単位は必要になります。入門2単位、学説史2単位、理論基礎4単位×2、理論応用4単位×2。

 21(研究法)の分野は、すでに日本社会学会が母体となって作成された「社会調査士」標準カリキュラムがありますので、省いて考えることにしましょう。

 1と2が終わったら、そこからさらに個別分野を学ぶわけですが、「幅広く」という方針から言えば、最低でも2単位×4分野は必要でしょう。できれば16単位はほしいところです。

 そして、それらの知識を応用する実践的な経験が必要ですので、ゼミか実習による8単位が欠かせません。

 そうすると最終的に36〜44単位ということになります。

 社会学専門の学科ならともかく、学際性を売りにしている学科では、とてもじゃないけど現実のカリキュラムで対応するにはムリがあります。

 だから実際には、入門(2〜4単位)で基礎概念と身近な応用事例を学ばせ、さらに8単位ほど専門の講義を必修にして、あとはゼミ(2年間で8単位)でなんとかする、というのが一般的なところです。合計で20単位足らず。

 理想と現実の間には、これほど大きなギャップがあります。

 社会学のような分野では、「標準化」というのはパンドラの箱のようなものですね。きちんとやろうとすれば、現状の不具合が明るみに出てしまう。学部の段階で標準化されたカリキュラムに対応できる大学は日本に果たしてどれくらいあるものか。学習内容が明確な社会調査士のときですら時間がかかったのに、今度はとんでもない議論になるだろうなぁ。

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このページは、mskimが2008年2月 2日 12:26に書いたブログ記事です。

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