計量研究の紹介記事

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 22日付の共同通信配信記事にこういうのがありました。短いので全文引用させてもらいます。

緑茶たっぷり、胃がん撃退 緑茶たっぷり、胃がん撃退 喫煙者には効果なし

 緑茶の渋味成分であるポリフェノールの一種の血中濃度が高い女性は低い女性に比べ、胃がんになる危険性が約3分の1だとの疫学調査結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)が22日発表した。緑茶を習慣的に多く飲んでいると、血中濃度も上がるとみられる。

 男性も含めて喫煙との関係をみると、ポリフェノールの血中濃度が高い非喫煙者は胃がんの危険性が低いが、血中濃度が高い喫煙者は、危険性がやや上がる傾向も判明。

 研究班の井上真奈美国立がんセンター室長は「たばこと緑茶の組み合わせが悪いのではなく、緑茶をたくさん飲んでも、喫煙で効果が打ち消されてしまうためではないか」と分析している。

 せっかくの研究が、最後のコメントひとつで台無しになってしまっていますね。

 記事を読むとまるで厚生労働省がやった研究のようですが、厚労省のウェブサイトにはいっさい記載がありません。たぶん、この研究って厚労省の研究費補助金を受けた日本がんセンターの研究じゃないんでしょうかね。日本がんセンターのサイトには、それらしき研究系統を紹介するページがあります。「生活習慣改善によるがん予防法の開発と評価」

 「エビデンスの評価」をのぞいてみると、「緑茶と胃がん」の関連は「ない、もしくは弱い」という結果になっています(http://epi.ncc.go.jp/can_prev/summary/pdf/green_stomach.pdf)。まぁ、順当に考えると、緑茶を飲んでも胃がんのリスクはほとんど軽減されないということなんでしょう。

 ところが、そんな結果にメゲたりせず、手を変え、品を変えながらとことん追求するのが真の研究者というものです。記事によると、「緑茶の渋味成分であるポリフェノールの一種の血中濃度」と胃がんの危険性の間に何らかの関連が発見されたらしい。よくがんばりましたねー。

 ただ、緑茶と胃がんの直接的な関連がどうやらほとんどないという結果があるにもかかわらず、「緑茶を習慣的に多く飲んでいると、血中濃度も上がるとみられる」なんて誤読を導くのははなはだ不誠実です。この辺は、たぶん研究者がそれっぽく示唆したことを、記者さんがはっきりと書いちゃった、というところかもしれません。

 ともかく、うまい発見に気をよくしたんでしょうね。「ポリフェノールと喫煙との交互作用を調べてみよう」ということになった。

 すでに「胃がんと喫煙」の関連ははっきりと出ているので、緑茶のポリフェノールとの重層的な関係を調べたいというのは自然なことです。ひょっとしたら、喫煙のリスクを劇的に軽減したりする効果が見つかるかもしれない。

 ところがその結果!

 たしかに交互作用は見つかったものの、それは「ポリフェノールの血中濃度が高い喫煙者は、(胃がんの)危険性がやや上がる傾向」というものだった。

 しくみはまったく不明ながら、「タバコを吸わない人には胃がんのリスクを減らす可能性があるポリフェノールが、タバコを吸う人には胃がんのリスクを増やしてしまう可能性がある」というのです。

 これって大発見じゃないですか?

 疫学の範囲は超えてしまうけど、どうしてそんな不可解な現象が生じているのかを突き止めることができれば、さらに面白い研究になります。

 なのに!

研究班の井上真奈美国立がんセンター室長は「たばこと緑茶の組み合わせが悪いのではなく、緑茶をたくさん飲んでも、喫煙で効果が打ち消されてしまうためではないか」と分析している。
 そりゃないでしょう。そんな結論ありえないでしょう?

 この研究分野なら、使ったのは分散分析か三重クロス表でしょうか。「緑茶をたくさん飲んでも、喫煙で効果が打ち消されてしまう」というのは、分散分析風にいえば、「緑茶による負の主効果よりも喫煙による正の主効果のほうが大きい」ということです。交互作用とはまったく関係がありません。

 交互作用をいいあらわしているのは、まさに「たばこと緑茶の組み合わせが悪い」ということ。それ以外の解釈の可能性はないんじゃないかな。

 もし、井上真奈美さんが本当にこういうことを言ったり書いたりしたのだとすれば、それはすなわち、井上真奈美さんは自分が研究に使っている統計について、大学2年生レベルの基礎知識すらお持ちでないということになります。それとも、「緑茶は体にいいはずだ!」という仮説に目が曇って、自我包絡に陥ってしまっているか。あるいは、その両方かな。

 つまり、記事の最後のコメントは、ほとんど研究者としての資質を疑わせるような内容なのですね。

 もしぼくが井上真奈美さんで、そしてぼくがしゃべった内容を記者が誤解してあんな記事を書いてしまったとしたら、即、名誉毀損で訴えるところです。

 実際のところは、記者が悪いのか、井上真奈美さんが悪いのかはわかりませんが、専門家の論文を素人である記者が紹介するというのは、もともとムリがあるという気はしています。

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このページは、mskimが2008年2月24日 12:24に書いたブログ記事です。

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