イソップ寓話の有名な「北風と太陽」の話ですが、どうも納得できないのですよね。はたして、北風は本当に旅人の上着を脱がすことができないのか?
というのも、おおかたのバイク乗りは、風の力がどれほど強く、また、どれほど器用なものなのか、身をもって知っています。
たとえば、高速道路の通行券を2枚の革の間にぴったりと挟んで留めてあったとしましょう。手でぎゅーっと引っ張っても簡単には取れないような状態です。それが、走行中に風の力で吹き飛んでいってしまったりする。
あるいは、ゆるめにジッパーを閉じていたタンクバッグがいつの間にか風の力で開いてしまい、中に入れていた帽子やウィンドブレーカーが風圧でバッグから飛び出していってしまう、とか。
よく、バイクに乗ることを「風になる」などと詩的に表現することがありますが、現実には、バイクにとって風は行く手を阻む頑強な敵であったり、イタズラして装備を奪い取るやっかいな相手だったりします。
まあとにかく、風の力は強いだけでなく、器用なのです。
だから、旅人の上着を剥ぎ取るぐらいなら、ぼくは可能だと思うんですよね。上着どころか、補正下着みたいにぴったり身体に張り付く下着以外は、すべて風の力だけで盗ってしまうことができるんじゃないかという気がします。
ところで、「ビューフォート風力階級」というのをご存知でしょうか。0から12までの13段階で定義された風の強さの尺度です。ウィキペディアから風力9以上を引用させてもらうと;
| 風力階級 | 呼称 | 地上10mでの風速(m/s) | 地上10mでの風速(ノット) | 陸上の様子 | 海上の様子 |
| 9 | 大強風(だいきょうふう) | 20.8〜24.4m/s | 41〜47ノット | 屋根瓦が飛ぶ。人家に被害が出始める。 | 大波。泡が筋を引く。波頭が崩れて逆巻き始める。 |
| Strong gale | |||||
| 10 | 全強風(ぜんきょうふう) | 24.5〜28.4m/s | 48〜55ノット | 内陸部では稀。根こそぎ倒される木が出始める。人家に大きな被害が起こる。 | のしかかるような大波。白い泡が筋を引いて海面は白く見え、波は激しく崩れて視界が悪くなる。 |
| Whole gale | |||||
| 11 | 暴風(ぼうふう) | 28.5〜32.6m/s | 56〜63ノット | めったに起こらない。広い範囲の被害を伴う。 | 山のような大波。海面は白い泡ですっかり覆われる。波頭は風に吹き飛ばされて水煙となり、視界は悪くなる。 |
| Storm | |||||
| 12 | 颶風(ぐふう) | 32.7m/s以上 | 64ノット以上 | 被害が更に甚大になる。 | 大気は泡としぶきに満たされ、海面は完全に白くなる。視界は非常に悪くなる。 |
| Hurricane |
さて、風力の最大値「12」ですが、京都滋賀あたりでは台風の中でもあまり経験できないほどのすさまじい強風の状態です。なにせ「颶風」ですからね。「颶風」。もう漢字の読み方も分からないぐらい、めったにない強風ですw
ところが、バイクではそんなにめずらしい強風とはいえません。
- 高速道路の法定速度である時速100kmなら秒速28m (全強風/台風なら「並の強さ」)
- 名神高速でぎりぎりつかまらない時速120kmなら秒速33m (颶風/台風なら「強い」)
- 気持ちよさそうに飛ばしてるなーという時速140kmなら秒速39m (この辺から風のイタズラがひどくなります)
- 「公道でそれ以上は危険だろ」と感じる時速160kmなら秒速44m (台風なら「非常に強い」)
- サーキットのストレート、時速180kmなら秒速50m (前を向いて息をするのがつらい)
- ぼくのバイクで全開いっぱい、時速200kmなら秒速56m (台風なら「猛烈」)
もし、太陽と競争中の北風が、つい本気を出して秒速80mの突風を断続的に吹き付けたとします。旅人は吹き飛ばされ、地面に衝突し、命を失うでしょう。あとはゆっくり時間をかけて地面を転がし、上着を剥ぎ取ればいいのです。
でも、北風は、旅人を殺してしまうことを避けて、勝ちを太陽に譲ってあげたのでしょう。バイク乗りは北風さんの実力をちゃんと知っています。
注)ぼくは日本の公道ではスピードを出しませんよ。あくまで一般論です。
子どもたちはドライブ好きなので問題ないのですが、猫はそうも行きません。