外国人の地方参政権 #1

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 先日、李怜香さんがツイッターに書いたこと。

永住外国人地方参政権法案に反対する人の特徴は、わたしが外国人だというと、意見もまったく聞かず、参政権法案に賛成だと決めつけて話をすすめるところだね。賛成反対どころか、言及さえしてないのになぁ。超能力者か(笑)

 それに答えてぼくが書いたこと。

ぼくも、地方参政権については賛否を公言したことは一度もないんだけど、その手の人々は賛成だと思い込んでくるね。金明秀ではなくザイニチという記号を相手にしてるんだろう。

 あぁ、字数だけ気にしてたら、めちゃくちゃ偉そうにタメ口つかってる...。ごめんなさい。

 ともかく、ぼくはこれまで、とても仲のよい友人を除けば、地方参政権について個人的見解を披露したことがありません。正確に言うと、HANBoardなどに、地方参政権を外国人に付与できるとする理論的な学究成果を紹介したことはあります。また、諸外国において移民2世以降の政治参加がどう扱われているかについて述べたこともあります。でも、ぼく自身がそれを肯定的に捉えているか否定的に捉えているかについては明言したことがありませんし、ぼくが参政権を欲しがっているかどうかについてはいっさい言及したことがありません。

 では、なぜぼくは、賛否を表明してこなかったのか。主たる理由の一つを紹介すると、在日コリアンに地方参政権の門戸を開くかどうかというのは《日本人の問題》だとぼくは思っているからです。

 外国人の地方参政権をどうするべきかについてはいろんな考え方があるものの、どれをとっても後付けのリクツにすぎません。そもそも、大量の移民の子孫が何代にもわたって「外国人」のままであるというのは、世界的にもまだ新しい状況なのですから、答なんてどこにもないのです。

 言い換えると、どこの国でも、そういう新しい状況に対して根源的な疑問を持ち、その疑問に答えるために、後付けのリクツを模索している最中なのです。

 その根源的な疑問とは何かというと、「自分の意思で国境を渡った移民一世はともかく、この国で同じように生まれ育ち、同じように社会に貢献している二世以降が、出自が違うということだけで政治的な権利を持たないというのは、ずいぶん不公正じゃないか? もしそれが法律だとしたら、その法律のほうがおかしいんじゃないのか?」 というものです。

 素朴で直感的な問いですね。でも、少なくともヨーロッパでは、それが始まりでした。つまり、隣人である移民の子孫が政治的に排除されている状況を、その国の国籍を持つ人々の多くが《おかしい》と感じる気持ち。自分の国はそんなに不公正で義理を欠く国だったのかという憤り。それが、外国人に地方参政権を付与しようという運動の出発点だったということです。

 以下は、日本人と在日コリアンに限定して話を進めましょう。というより、ぼくの私的見解の話に戻ります。

 日本国籍を持つ地域の友人・知人たちが、「同じ町の居住者である金君に選挙権がないというのはぜったいにヘンだよ。ずっとこの市に住んできたし、町内会の仕事もやってくれている。道路問題では行政との交渉で汗もかいてくれたじゃないか。人権講演会の講師も勤めてくれた。これだけ住民として貢献しておいて、政治的権利がないというのは、おかしいじゃないか。こんな歪んだ状況は隣人として許せない」と言ってくれるのであれば、選挙権を獲得した上で、地域の一員としての責務を今まで以上に全うしたいと思う。

 一方で、「へー、選挙権がないんだ。まぁ、国籍が違うんだから、しょうがないよね。文句があるなら国に帰れば? ともかく、ぼくの目に入らないところに消えてくれないかな。」と言うのであれば、そんな地域のメンバーシップ(=地方参政権)はいらないと思う。だいたい、外国人だから仕方ないなんて、20世紀の話だろう。グローバリゼーションの進んだ現代では、それじゃつじつまが合わなくなってきていて、どうすれば矛盾を解消できるかどこの国でも議論してるんだろうが。それを、ガイコクジンという記号としか見ようとせず、自分には関係のない話だと切り捨てるような輩が多数派であれば、そんな地域に貢献しようとは思わないということだね。

 つまり、ぼくの地方参政権に対する賛否(y)は、隣人たる日本国籍者たちが同じ地域のメンバーだと支持してくれる気持ちを持っているかどうか(x)の関数なんですね。ネットでは参政権付与に反対というテキストが目立つけれども、世論調査では賛成が過半数を占めているようですから、ぼくの気持ちも前向きになってきています。

 さて、最後に一つ大事なことを。

 ここまで読んで、「『どうしてもくれるって言うなら参政権を貰ってやってもいいよ』なんて、いったい何様なんだ。どうしてそんなに偉そうなんだ」と思ったアナタ! あなたは、ガイコクジンは頭を下げて参政権をこいねがうべきだと思っていることになりますね。それは傲慢ではないのですか? 偉そうなのはどっちかな?

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コメント(4)

ブルーインさんに参政権がないなんて、おかしいですね(憤)
日本は国際社会の一員だなんて言えませんね。

こんにちは。
客観的根拠に基づいた議論をなさっているブログやHPに大変感服いたしました。

私は、血統主義、非大和民族差別、日本語教育の不備、民族教育への無理解といった日本社会と国家に存在する要素が日本国籍取得を難しくしているため、外国籍者の無権利状況(もしくはそれに近い状況)を改善する方途として、逆説的に世界でもまだまだ稀な外国籍者地方参政権付与論が登場したのではないかと思っています。しかも、コモンウェルスやEU市民権は国家の外延を拡張するという理屈なので、同列には論じられないです。

明らかなのは、特別永住者に居住地日本で参政権がない状態だったのは、自分で選択した結果ではないことです。その意味では、難民と同じかも知れません。明秀さんのような方を共同体の一員として一緒にやりたいという意思があるのかどうか、これを決めるのは確かに日本国で現在メンバーシップを持っている人たちだと思います。それでも、本来備わった権利をどの地で行使したいのか、一人の在日コリアンとして表明しても良いのではないでしょうか。
(なお、日本社会に求められるbottom lineは、そうした表明内容に反対する人のなかで、暴力や侮蔑的言動には全力で抗議することです。)


私は母が在日コリアンなのですが、在日コリアン青年団体への関与を経て、歴史的経緯から日本国は一方的に二重国籍か国政・地方両方の参政権を付与すべきだという考えに至りました。ただし、一般永住者や定住者の一世に関しては、日本語教育を含む生活支援や福祉、民族教育(ヤマト民族?への理解教育も含む)の充実が先であって、それが充実していれば参政権の条件に帰化を求めるのは決して排外主義ではないと思います。

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このページは、mskimが2010年2月10日 00:01に書いたブログ記事です。

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