人権侵害しか切れる外交カードがないとは、どんなならず者国家だ?

| コメント(0) | TB(1) このエントリーをはてなブックマークに追加

 朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国の局地的紛争を受けて、高木文科相と仙石官房長官が、それぞれ、朝鮮学校を無償化の対象とする方針を見直す考えに言及したという。

 なんと愚かなことか。人権侵害しか切れる外交カードがないとは、どんなならず者国家なのかといわざるをえない。もちろん、北朝鮮のことではない。日本のことだ。

 歴史を振り返ると、1950年代には、李承晩ラインをめぐる摩擦により、大韓民国のイメージは最悪に近かった。「劣等国が増長して暴挙に出た」といった植民地主義丸出しの罵倒表現が、連日、マスメディアや国会を賑わしたのだから、それも当然だろう。

 そうした世論を受けて、当時の日本政府はどうしたか。まだ日韓両国に正式な国交がなかったこともあり、日本政府は韓国に直接的な抗議をするのではなく、国内のコリアンを抑圧することで、韓国に対する外交カードに(あるいは憂さ晴らしで国民のガス抜きを)しようとした。

 つまり、李ラインで日本人漁民が拿捕・抑留されたことに対抗して、「日本に住む朝鮮人を全員、韓国に強制送還せよ」といった強硬論が国会で審議されたり、コリアンを微罪で逮捕した挙句、強制送還をちらつかせて大村収容所に収監したりしたわけだ。

 今回の日本政府のスタンスは、50年代当時と完全に同じ構図である。第一に、国内のコリアンに対する抑圧をちらつかせることで外交カードの不在を補おうとしている点において。第二に、その愚劣な発想が法的にも外交的にも妥当性を欠くという点において。

 朝鮮学校のみを無償化対象から除外することは、少なくとも法的には妥当性のない政策だ。日弁連の会長声明が明快に断言したように、法的な観点からは「この差別を正当化する根拠はない」のである。法的に可能であれば、朝鮮学校は無償化の対象外とすることで、とうに決着が付いているだろう。

 また、外交的観点からも、無償化除外は合理的ではない。なぜなら、北朝鮮に外交的な攻撃の糸口を与えてしまうことになるからだ。日本政府が北朝鮮の人権状況を批判したところで、鼻で哂われて終わりということになりかねない。むしろ、2月末にジュネーブで行われた人種差別撤廃委員会の対日審査で、複数の委員が「差別だ」として無償化除外問題に疑念を表明する一幕があったことを考えると、外交的にはむしろ日本の汚点になるといったほうがいい。

 この半世紀、日本の半島政策と在日外国人政策に、イノベーションも理念の深化もなかったということだろう。日本政府は、いったいいつになれば、自らの愚かさに目覚めるのか。

 

参考)各弁護士会の会長声明

日本弁護士連合会 http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/statement/100305.html
東京第二弁護士会 http://niben.jp/info/opinion20100304.html
東京弁護士会 http://www.toben.or.jp/news/statement/2010/0311.html
大阪弁護士会 http://www.osakaben.or.jp/web/03_speak/seimei/seimei100310.pdf

 

前のエントリー3件

次のエントリー3件

トラックバック(1)

トラックバックURL: http://han.org/blog/mt-tb.cgi/326

最近の若者はこう考えます! - 朝鮮学校の無償化停止 (2010年11月24日 14:11)

時事ドットコム:朝鮮学校無償化、手続きを停止=北の韓国砲撃で?仙谷官房長官 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc&k=20101... 続きを読む

コメントする

このブログ記事について

このページは、mskimが2010年11月24日 13:11に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「「モンスター」は差別表現か」です。

次のブログ記事は「日系アメリカ人の強制収容所問題と朝鮮学校の無償化除外問題の相似について」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。