WFP、世界食糧計画特別報告書


記事番号:5405 (1998年12月24日 23時40分02秒)
投稿者:李在一 (属性:在日朝鮮人)
 メールアドレス:fwii2087@mb.infoweb.or.jp

[話題別一覧|時系列一覧|最新50投稿|最新20+関連]
この記事は[AFP、フランス通信]へのコメントです。
この記事には[WFP、世界食糧計画特別報告書2 (李在一)]というコメントが投稿されています。

内容

李在一です。

在日MLからの転載です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この報告書の内容は、北朝鮮の現在の実情を知るうえで、今のところ公表されて
いるもののうち、もっとも信頼できるものと考えていいと思います。また、私た
ちが北朝鮮の人々のために何ができるか、ということを考えるうえで、貴重な判
断材料にもなると思います。

訳文は、じっくり練っていないし、誤訳もあるかもしれません。特に農業経済学
とか農学・化学などのご専門の方、おかしなところがあったらご指摘ください。

(原文はここ↓)
http://www.fao.org/giews/english/alertes/1998/Srdrk981.htm

食糧・農業にかんするグローバル情報および早期警戒システム
 世界食糧計画(World Food Programme)特別報告書

朝鮮民主主義人民共和国への収穫高と食糧供給にかんする評価のための
国連食糧農業機関(FAO)および世界食糧計画(WFP)の合同調査団

1998年11月12日

1.概観
2.朝鮮民主主義人民共和国の経済と農業
3.1998年の食糧生産に影響をおよぼした諸要因
 3.1. 降雨量と食糧の地域的偏在
 3.2. 灌漑
 3.3. 肥料
 3.4. 種子
 3.5. 機械化
 3.6. 虫害と病害
 3.7. 稲とトウモロコシの作付面積と生産
 3.8. 二毛作計画
 3.9. その他の食用作物
 3.10. 家畜
4.1998−99農業年度における食糧の供給と需要の分析
 4.1.1998−99農業年度における食糧供給状況
 4.2.1998−99農業年度における穀物の供給・需要バランス
 4.3.食糧の入手と対処の仕組み
 4.4.1998−99農業年度における食糧援助
5.短期的、中期的および長期的方策

【調査団による評価の要点】

●1998年における朝鮮民主主義人民共和国の穀物生産は、極度に落ち込んだ
 昨年の266万トンにたい して、348万トンに達すると見積もられる。

●収穫の改善にもかかわらず、朝鮮民主主義人民共和国では、1999年も国内
 穀物生産がその住民にとっての必要最低限の消費量の8ヶ月分のみにとどまる
 という食糧不足になるとみられる。

●1998年および1999年には、食糧援助としての105万トンを含めて、
 約135万トンの穀物輸入が必要となろう。

●社会的な弱者の階層のための必要最低限の栄養と、復興作業を支えるのに必要
 な食糧とを確保するため、ねらいを絞った適切な食糧援助が必要となろう。

●農業の復興、再建、開発という点に緊急の関心がよせられるべきであり、この
 国が必要最低限を満たすのに十分な食糧を生産できるよう適切な支援が求めら
 れる。

●より直接的には、農業での投入、すなわち、主に肥料、予備部品、燃料の不足
 を解消することに焦点があてられる必要があろう。

1.概観

1995年以来、朝鮮民主主義人民共和国では、経済の衰退と自然災害が重なっ
て、国全体での食糧の確保がきわめて困難になった。かつて前例がないほどの規
模の食糧援助や、農業復興のための国際的支援が、状況を緩和するのにまちがい
なく寄与してはいるものの、この国は食糧確保の見通しの点でまだ危うい状況に
直面している。

先に、作付け期間中の6月になされた、FAOとWFPによる合同の収穫高と食
糧の見通しにかんする評価でも、良好な天候条件においてさえ、必要不可欠な農
業投入が慢性的に不足しているため食料生産がそこなわれており、今年もなおか
なりの食糧不足をもたらすだろうと警告した。さらに、この国が厳しい経済問題
をかかえており、食糧を商業ベースで輸入する能力がはなはだしく落ち込んてい
るため、不足している大部分は食糧援助によってカバーされる必要があろうと、
付け加えた。

収穫高と食糧供給にかんする追跡調査のためのFAOとWFPの今回の合同調査団は、
1998年10月10日から27日までこの国を訪れ、1998年の収穫高の最
終的な査定を行い、1998−99農業年度の食糧供給見込みを評価した。政府
部局、地方官僚、共同農場の管理者および労働者ら、それにこの国で活動してい
る国連機関、二国間援助国、NGOの関係者らとの論議をつうじて、それと、選
ばれた諸地域でのフィールド調査にもとづいて査定が行なわれた。都市部でも農
村地帯でも、任意に抽出した家庭への訪問調査が行なわれた。調査団は、同国の
道と指定市、あわせて12地域のうちの8地域、すなわち、咸鏡南道、江原道、
黄海南道、黄海北道、平安南道、ケーソン、カンドン( Kandong)、ピョンヤン
を訪れた。査定対象の地域は、この国の米とトウモロコシの約75パーセントを
生産している。稲田の面積を確認するためには、アメリカ合衆国地理調査局地球
資源観測システム(EROS)データ・センターで1998年に国連環境計画(UNEP)
によって作成されたランドサット衛星写真を用いた。

調査団は、良好な天候と肥料の面での国際的支援とが組み合わさって、今年の収
穫はいくぶん回復したことをつかんだ。1998−99農業年度の穀物生産は、
348万トン(精米換算 milled equivalentでの見積りを含む。)であり、極度
に落ち込んだ昨年の収穫高より30パーセントほど多い。これは、134万10
00トンの精米(206万3000トンの稲)、176万5000トンのトウモ
ロコシ、それに37万5000トンと見積もられる、二毛作されている小麦と大
麦を集計したものである。しかし、生産における改善にもかかわらず、必要最低
限の食糧を満たすには、なお約135万4000トン不足しており、それは輸入
によってカバーされねばならない。同国は商業ベースの輸入をつうじて不足分の
一部をカバーすることが期待されるが、1998−99穀物取り引き年度(11
月から10月)において、なおかなりの食糧援助が求められるだろう。商業ベー
スでの輸入を制限している外貨準備の逼迫を別にしても、また経済の衰退により、
鉄鋼のような工業原料をもちいるバーター貿易もますます実行できそうにない選
択肢になりつつある。その結果、1998−99年度における商業ベースの輸入
は、せいぜい穀物30万トンに制限されそうである。ゆえに残るギャップは約1
05万トンの穀物である。この国の住民、とくに社会的な弱者の階層のために最
低限の消費水準が確保されるよう、このギャップに対処するために食糧援助が必
要とされる。

さらに、将来の食糧安全保障 food securityを確保するために、農業への国際的
支援が現在の低い水準からかなり増大されることが要請される。この点では、国
連開発計画(UNDP)主導の円卓会議(1998年5月にジュネーヴで開催)や、
1998年11月30日に予定されている同国の農業復興および環境保護を支持
するためのフォローアップ会議は、計画的なアプローチにとっての重要な手始め
である。

1998−99農業年度において、調査団が目的を絞ったものとして勧告した食
糧援助は、48万トンの穀物と穀物生産物を含んでいるが、そのうち約36万ト
ンは保証され、現在搬送中であり、残りの12万トンの穀物は1999年10月
31日までの消費でやりくりされるよう残されている。これらの穀物は、託児所、
幼稚園、児童センター、小学校の子どもたち、病院の入院患者、妊娠中や授乳期
の女性、それに農業部門の復興作業における労働維持的食糧 food-for-workを保
証するため、ねらいを絞った援助を供給するのに用いられるだろう。この勧告は、
援助側がその援助をモニターするために立ち入ったと思われる、全国211の地
方行政区のうちの171地区について査定された必要量にもとづいている。ねら
いを絞った食糧援助の実際の量は、その贈与で支えられる活動をモニターできる
よう贈与側に認められた立ち入りの機会にもとづいて調整される必要があろう。
それに加えて、調査団は、残りの57万4000トンの穀物不足分にあたる食糧
援助計画をも勧告するが、それらは住民の必要最低限の栄養を満たすのに役立つ
よう、公共配給制度をつうじて一般的な配分にあてられうるものである。

一定の地域への立ち入りは依然として制限されているものの、過去数年にわたる
相互関係の結果、援助計画がいかに透明性と説明責任とを伴って実施されるべき
であるかという点にかんして政府と国連システムとのあいだによりよい合意が形
成されつつある。協同関係をいっそう改善するための双方による努力が、目前の
食糧不足と将来的な開発の必要との両方に対処するための食糧援助計画および開
発援助計画のより効果的な立案と実行を確保することになるだろう。

短期的および中期的な介在の重要性にもかかわらず、朝鮮民主主義人民共和国に
おける将来の食糧安全保障は、主要な経済的困難に対処する解決策に決定的に依
存しているということを調査団は主張するものである。これらの解決策がなけれ
ば、たとえ自然災害がない場合でさえ、食糧供給の状況はきわめて不安定なまま
であろう。というのも、農業生産力は低下し、同国の商業ベースで食糧を輸入す
るのに必要な資金の調達力も減少し、バーター貿易もますます実行しにくい選択
肢になっているからである。

2.朝鮮民主主義人民共和国の経済と農業 (1)

  (1) 朝鮮民主主義人民共和国に関して利用できる乏しい情報のため、この節の
 内容は、極東地域に関して近年利用できるヨーロッパの刊行物、エコノミスト
 ・インテリジェント・ユニット(EIU)、それに朝鮮民主主義人民共和国カント
 リー・プロフィールを含むさまざまな出典にもとづいている。

朝鮮民主主義人民共和国の経済は、1950年代半ばごろから農業と工業の両者
の急速な成長を伴って活発に発展した。当初の高い成長率は1970年代半ば以
来、持続しなかったが、1989年までに朝鮮民主主義人民共和国の1人当たり
国内総生産(GDP)は1250ドルに達したと報じられている。その時までに
は製造業はかなりの進歩をはたし、GDPの27から30パーセントをしめた。
農業とサービス関連もそれぞれほぼ同様の割合をしめ、残りの10パーセントは
公益事業(電気、ガス、水道など)と建設部門での生産だった。これらの数字は、
多様化を伴った経済成長を表わしている。

それとは対照的に、1990年代初頭以来、経済は深刻な衰退を示した。199
5年と1996年の洪水、1997年における津波と干ばつという連続した大き
な自然災害は、数年来の経済の低迷と停滞のうえに起こったので同国の経済を疲
弊させ、潜在的な構造問題を浮きだたせた。それ以来、経済がかなり収縮した。
データを入手するのは難しいが、1人当たりGDPは現在はおそらく1989年
の半分以下とみられる。

1995年から1997年のあいだの自然災害は、実際、同国の経済に付きまと
っていた潜在的な構造問題を悪化させたということが、いまや認識されている。
第一に、工業、農業、それに他の部門における機械設備は、そのほとんどが19
50年代、1960年代に調達、設置され、それらは今や時代遅れであるか、粗
悪な状況にある。多くの場合、機械や設備をただ稼動させるにも予備部品が必要
とされている。他の場合、近代化と復興がなされなければ稼動させるのも不可能
である。さらに別の場合には、完全に取り替える必要がある。

朝鮮民主主義人民共和国にとっての大きな経済的逆行は、旧ソ連および東欧にお
ける旧中央計画経済諸国とのあいだの有利な経済関係の弱まりだった。そうした
経済関係は、過去の高い経済成長を促進した、朝鮮民主主義人民共和国にとって
の多大な援助と貿易利益を生み出していた。中国とのバーター貿易もまた中国の
経済改革に引き続いて、衰退してしまった。その結果、同国の経済は今や大きな
貿易赤字と低位の外貨準備、対外信用の状況に直面している。これらの問題は、
根深い構造的な不調を象徴しており、緊急の経済的必要に対処するための同国の
能力を制約している。農業部門の現在の困難と将来の展望についての判断は、こ
うしたより広い脈絡において、なされるべきなのである。

朝鮮民主主義人民共和国における農業は、協同農場、国営農場として組織され、
歴史的には主に稲とトウモロコシに関心が集中させられてきた。食糧の自給自足
をはたすために、農業の近代化が追求され、4つの主要な増産要因、つまり、灌
漑、電化、化学化(肥料、殺虫剤、除草剤など)、それに機械化に重点がおかれ
てきた。70年代、および80年代初頭には、高い水準の成功が達成された。灌
漑が拡張され(1970年までに可耕地の70パーセント以上に達した。)、十
分な数のトラクター(全体で75000台以上)、植え替え機、脱穀機、トラッ
ク、その他の農業機械が備えられた。農村の電化は急速に拡張され(1970年
くらいまでにはすべての農村地帯をカバー)、また、肥料や他の農薬も十分な量
で入手可能だった。まったく当然なことに、こうした高水準の投入にもとづく農
業は、ひとたび資源の制約ゆえにそうした投入水準をもはや維持できなくなれば、
収穫率の低減を経験しはじめる。なおそのうえに、近年の洪水、干ばつ、それに
極度の寒冷つづきで、大きな混乱、崩壊、生産の減退が引き起こされた。それゆ
え、農業部門を再生し、回復させるために必要とされることは、自然災害によっ
てもたらされた損害を修復し、また、構造的な困難に対処するという2つのこと
がらである。

農業復興は、長期的問題への媒介環である。しかし、そのプロセスは、この国が
最低限の必要を満たすのに十分な食糧を生産できるよう、緊急に、しかも本格的
に開始され、強められるべきである。この点で、国連開発計画が主導したジュネー
ヴ円卓会議(1998年5月)と、同会議による、この国の経済全般と特に農業
復興・開発のためのフォローアップ計画は大いに可能性のあるイニシアティヴで
ある。けれどもまた、その間、国際社会は不十分な食糧生産に起因している当面
の食糧援助要求に対処することがきわめて重要である。同国の商業ベースでの輸
入能力はきわめて制限されている。それゆえ、国際的支援は、国内生産の増加と
経済再生のペースとに慎重に調和させて、段階的に終わらせてゆく必要があろう。
この点では、1995年以来供給されてきた国際的な緊急復興支援が、同国にと
ってよりひどい食糧危機を回避させたことは強調されねばならない。

制約されている耕地面積を前提にすれば、農業生産の増加は集約的な耕作と収穫
率を高めることからしかもたらされ得ない。高投入農業と高密度の作付けのほか
にとりうる方法はほとんどなさそうである。しかし、肥料や他の農薬の大量の投
入は、同国でたいていそうであるような単一栽培と結びついて、土壌のいっそう
の劣化を引き起こし、その結果、高い投入にもかかわらず低い収穫率しか実現で
きないことにつながりうる。かくして、中期的には稲とトウモロコシに焦点をあ
わせた農薬多用農業が促進されうるのだが、長期的には、有機肥料の使用を増や
し、化学肥料にさほど依存しなくてよい作物品種を導入し(そうした品種は小さ
な規模ではすでに導入されている)、また輪作するなど、作付けのパターンを多
様化することが望まれるだろう。この点では、研究開発の活動が決定的に重要と
なる。この問題は、農業復興のプロセスが進められるときに視野に入れておかれ
る必要がある。

フィールド調査と聞き取り調査のあいだ、調査団は、肥料不足が国内食糧生産に
とってのもっとも深刻な問題だと知らされた。朝鮮民主主義人民共和国にある3
つの肥料工場全体で窒素肥料を40万トン以上生産でき、それは肥料の自給に十
分な量である。しかし、設備の老朽化、不十分なメンテナンス、予備部品の欠乏
や原料の不足、とくに石油の不足によって、これら工場の操業はひどく抑制され
ている。同国の燃料輸入の能力もまた制約されている。ゆえに、1998年に利
用可能だった肥料の総量は落ち込んだ。同年には国連国際農業開発基金(IFAD)
のプロジェクトをつうじてある程度の量が供給されたにもかかわらずである。

農業部門が直面している他の問題は、機械の故障と予備部品の欠乏、燃料の不足、
灌漑の不良、それに殺虫剤の不足である。機械化にかかわる問題は大きく立ちは
だかっている。農業機械や機具や灌漑ポンプの不作動、作動不良というような事
態がみられる。朝鮮民主主義人民共和国で確立した工業基盤は、同国での農業の
機械化を大いに進めた。しかし、1990年代に経験した経済的困難は、近年の
自然災害で悪化させられて、工業基盤も農業機械化の基盤も失わせた。量的に示
すのは困難ではあるが、「機械化」された投入の衰退、つまり、動力源がおそら
くかつての20パーセント程に落ち込んだことが、農作業をタイムリーに完了す
ることを困難にし、ゆえに、収穫率の低下と収穫時、収穫後の作物の損失を増加
させている主要な要因である。機械の不良の問題に対処するため、手作業を多く
し、役畜に頼るようになった。すでにある農業機械をもとどおり作動させるため
には、(a)まだ使える状態にあるすべての農業機械を作動させるのに十分な量
の燃料を、それに、(b)修理され、調整されてはじめて使用可能となる機械を
動員するために製造部門に部品などを製造させる原料と器材を、必要とするだろ
う。中期から長期の見通しでは、たいていの農業機械が取り替えられる必要があ
るだろう。

(つづく)


CGIスクリプト作成・販売:コウモリ@宗教のるつぼ (Mail Home)