WFP、世界食糧計画特別報告書2


記事番号:5406 (1998年12月24日 23時46分35秒)
投稿者:李在一 (属性:在日朝鮮人)
 メールアドレス:fwii2087@mb.infoweb.or.jp

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内容

李在一です。

在日MLからの転載です。

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WFPの北朝鮮農業にかんする報告書全文訳のつづきです。

3.1998年の食糧生産に影響をおよぼした諸要因

朝鮮民主主義人民共和国では、主食は米とトウモロコシである。これら2つの作
物が、同国で生産されている主要な穀類食糧をなし、およそ200万ヘクタール
の総可耕農地の約3分の2でつくられている。米はたいてい南部の平地でつくら
れ、トウモロコシはたいてい傾斜地でつくられる。米は水田で灌漑されており、
5月半ばから6月はじめに植え付けられ、9月末から10月に収穫される。それ
に対して、トウモロコシは主に降雨で栽培され、4月半ばから5月はじめに植え
付けられ、8月末から9月半ばまでに収穫される。明らかに、降水量が少ないと
米よりもトウモロコシに影響をあたえる。かくして、1997年の干ばつはトウ
モロコシ生産に破滅的な影響をあたえた。他方、米生産に大きな打撃をあたえた
のは、予備部品と燃料の欠如ゆえの灌漑システムの崩壊、水田作りの困難だった。

3.1.降雨量と局地的な洪水

朝鮮民主主義人民共和国では、西からの温帯性低気圧の影響で通常、雨季は7月
から8月末の時期にわたっている。ふだんはこの雨季の次に降雨の少ない秋の季
節が続く(10月から11月)。冬の期間(12月から2月)は通常、非常に少
ない降雨ときわめて厳しい寒さの天候で特徴づけられる。図1は、長期のパター
ンと比べた1998年の降雨量を示している。

〈図1〉

1995−97年の間、1995年と1996年の広範な洪水と、数十年来で最
悪の1997年の干ばつとによって、通常の降雨量パターンはひどく撹乱させら
れた。1998年には通常のパターンに戻った。けれども、1998年7月から
8月にかけての豪雨の結果、一部の地域、特に東海岸で、作物を数時間から2日
間以上にわたって水没させた局地的な洪水が起こったことが強調されねばならな
い。東海岸では、作付面積3万ヘクタールがかなりのダメージを受けたと報告さ
れた。しかしながら、全体としてみると、1998年の作物生産は概して良好な
天候にたすけられた。同時に、良好な天候による有益な可能性は、灌漑にかかわ
るもの、肥料、機械・機具、種子の品質、ビニールシートなど、これらの投入物
の制約によって、相殺されてしまった。その結果、農業生産力は、良好な天候条
件があれば可能であるような水準までには回復しなかった。

3.2.灌漑

この国の灌漑システムにおいては、エネルギーが決定的な要因である。主要な水
路とため池にポンプで水を流し込まなければならない。しかし、利用できる燃料
が減りつつある。そのうえ、水路とポンプ場の状態が自然災害のためにどこもひ
どい状態になりつつある。また、ポンプ場と送水管については、どこも予備部品
がなく、ひどいメンテナンスの状態にある。調査団は、水を流し込む時間、ゆえ
に水田への灌漑水の供給がはなはだ少なくなっているのを知った。

3.3.肥料

肥料の国内生産は、機械の老朽化、予備部品の欠乏、主要な原料や石油の不足で
きわめて制限されている。正確な数字を見出すことはむずかしいが、利用できる
肥料は、1997年においてもすでに少ない量だったのが、1998年にはさら
に減少した。含有養分量の点でみれば、1998年の使用は1989年の水準の
わずか18パーセントほどにすぎなかった。

〈図2〉

国際的な肥料の支援については、その大きな部分はIFADのプロジェクトをつうじ
て行われ、クラス1、クラス2の選ばれた農地に配分された。朝鮮民主主義人民
共和国の農業においての肥料の決定的な重要性は、とりわけ次のような事実から
明らかになる。すなわち、IFADプロジェクトの受益側(稲の全作付け面積の約10
パーセントを耕作)は、より多くの肥料を使えたため、全国平均よりかなり高い
稲の収穫率を実現した。

農業部門にできるだけ多くの化学肥料を供給しようというこうした努力とならん
で、政府はまた、他にとりうる農業生産力維持施策として、少なめの肥料で育つ
稲品種の使用と有機肥料の利用の増大(これはまた土壌の肥沃さを取り戻すたす
けとなりうる)とを奨励しつつある。しかし、これらの努力はまだ範囲が限定さ
れており、化学肥料が利用できるか否かが、いぜんとして農業生産力の主要な制
約となっていることに変わりはない。

3.4.種子

1998年において、種子の量は一般に問題とはならなかった。しかし、種子の
品質は以前ほど良くない。高い作付け密度のゆえに、播種の割合は、稲の場合、
ヘクタール当たり125kg、トウモロコシの場合、ヘクタール当たり45kg
というのが同国全体での標準的な慣行であった。しかし、フィールド調査をつう
じて、幾つかの協同農場では、稲の場合、ヘクタール当たり150kg、トウモ
ロコシの場合、ヘクタール当たり60kgまでの割合で播種していることがわか
った。それは、種子の品質の問題と寒冷な天候の影響をやわらげるための措置だ
った。きわめて寒い天候のときに苗床を覆うために必要なビニールシートは、  
1998年には使用が非常に限られており、より高い播種率に頼ったのだった。

3.5.機械化

高度に機械化された朝鮮民主主義人民共和国の農業は、農業機械や農機具の動力
のおよそ5分の4が老朽化と予備部品や燃料の不足ゆえに用いられないがために、
深刻な制約に直面している。フィールド調査のあいだ、調査団は、たくさんのト
ラクター、田植え機、トラック、それに他の農業機械が使わないか、使えないで
放置してあるのを見た。実際、トラックが使えないため、刈り取られた稲が長い
期間、たとえば3週間以上も田に積み上げられたままにしてあった。そうすると、
収穫後の損失が大きくなるのである。

いまや農業機械に代わって、ますます役畜が用いられるようになっている。政府
はこの慣行を奨励しているが、役畜による牽引力は1998年にはまったく制約
されている。そのうえ、飼料の問題ゆえに、役畜の活動力も十分でない傾向があ
る。機械の不足を補うために用いられた別の仕組みは、過去の慣行でなされた以
上に多くの人間労働を動員することだった。

3.6.虫害と病害

1997−98年の冬が通常より高い気温だったので、当初、1998年の農業
シーズンには虫害や病害の発生が多くなるだろうと危ぶまれていた。というのも、
そうした気温だと、微生物、虫の卵、胞子などが死滅しないからである。だが、
実際には、1998年には虫害と病害は、懸念の原因とはならなかった。その結
果、限られた範囲の虫害と病害の発生とわずかな収穫高の損失だけが報告された。

3.7.稲とトウモロコシの作付面積と生産

3.7.1.耕地面積

朝鮮民主主義人民共和国の国土の20パーセント程だけが耕作可能である。他は
主として山地であり、農業拡張にとってはきわめて制限された余地しかない。耕
地は約200万ヘクタールにのぼるが、もっとも穀物生産には約140万ヘクター
ルだけが適している。残りの耕地は主に果実栽培か、養蚕のための桑畑である。

地理的な制約のため、国営農場、協同農場における稲とトウモロコシの作付面積
は、過去において多かれ少なかれ一定にとどまった。しかしながら、近年の深刻
な食糧不足の結果、トウモロコシを丘の急な斜面に植え付ける試みがなされた。
だが、そうした慣行の環境面での影響(たとえば、土壌侵食や洪水の可能性の増
大)を別にしても、そうした作付けの場合の生産性は非常に低く、国内生産への
寄与が取るに足らないことがすぐさま認められた。それゆえ、目下の政府の政策
は、傾斜度15度以上の斜面へのトウモロコシの栽培を放棄し、これらの土地を
牧草地と林にするというものである。1998年において、政府は、トウモロコ
シの作付面積を59万3000ヘクタールに減らし、開いた土地を牧草地に転換
する計画を立てたが、そうした目標は牧草の種子の不足のため実現していない。
1998年のトウモロコシの総作付け面積は、調査団は62万9000ヘクター
ルと見積もったが、それは1997年の見積もり65万ヘクタールより少ないも
のの、計画面積より3万6000ヘクタールだけ多い。耕作にかかわるさまざま
な問題、つまり機械化の崩壊のため、1998年の稲の作付面積は58万ヘクター
ルと見積られ、1997年(60万1000ヘクタール)より少ない。1998
年の道ごとの稲とトウモロコシの作付面積見積もりは表1に示されている。

表1:朝鮮民主主義人民共和国:道と指定市ごとの稲とトウモロコシの作付け面
   積、1998年

道/指定市     稲        トウモロコシ
      面積(ha) %   面積(ha) %
ピョンヤン    26000   4.5        16000     2.5
平安南道       95000    16.4        67000    10.8
平安北道       97000    16.7        97000    15.4
慈江道          7000     1.2        39000     6.2
黄海南道      147000    25.4        88000    14.2
黄海北道       47000     8.1        75000    11.9
江原道         36000     6.2        41000     6.5
咸鏡南道       60000    10.3        53000     8.4
咸鏡北道       25000     4.3        53000     8.4
両江道          2000     0.3         4000     0.6
ケーソン       12000     2.1         7000     1.1
ナムポ         15000     2.5         8000     1.3
他             11000     2.0        81000    12.9
総 計        580000   100         629000(1)100

  (1) 調査団は、前回のFAO/WFP調査団に示された公式の数字にもとづ
  き、1995年と1996年の洪水以来まだ開墾されていない21000ヘクター
  ルの土地を調整して見積った。森林局管轄下の丘の斜面のトウモロコシが作
  付けされた小区画地についてもまた調査団に報告されたが、正確な見積もり
  は利用できない。

1998年に稲とトウモロコシが作付けされた土地の分類は、表2に示されている。

表2:稲とトウモロコシの作付け面積の分類

土地のタイプ     稲        トウモロコシ
        面積(ha) %   面積(ha) %
良 :クラス1  188000     32.4      202000     32.1
中位:クラス2    195000     33.6      195000     31.5
貧 :クラス3    197000     34.0      229000     36.4
総計              580000    100.0      629000    100.0

  注:クラス1の土地:平坦ないし/または水平、土壌良好、灌漑ずみ、農業
  機械・機具を日常的に使用。クラス2の土地:平坦または起伏(傾斜度0か
  ら10度)、灌漑ずみ、または未灌漑、良好ないし適度の土壌、農業機械・
  機具をしばしば使用。クラス3の土地:斜面と丘陵(稲の場合は平坦)、稲
  の場合を除いて未灌漑、不十分な土壌、農業機械・機具は通常、不使用。

3.7.2.収穫率と生産

調査団はサンプル測定を行なった。それは、選ばれた協同農場でも行なったし、
また、訪問した各道へのルート上で無作為に選んだ場所でも行なった(咸鏡南道、
江原道、平安南道、黄海北道、黄海南道、ケーソン市、ピョンヤン市管轄下のカ
ンドン郡)。これらの測定では、あらゆるタイプの土地がカバーされた。調査団
が訪問したときには、稲はまだ多くの田に見られたが、トウモロコシは収穫され
たあとだったので、たいていの場合、脱穀場から取ったサンプルで測定した。こ
うした測定と、田畑の観察、つまり土地と土壌の特徴の観察、それに農民や協同
農場職員とのディスカッションにもとづいて、土地のそれぞれのタイプごとの稲
とトウモロコシのヘクタール当たり平均収穫率を見積った。表3が、稲とトウモ
ロコシの収穫率と生産についての調査結果である。

表3:稲とトウモロコシの作付面積、収穫率および生産量、1998年

土地のタイプ       稲               トウモロコシ        穀物総生産量
                                                                             (1000トン)
       面積   収穫率   生産量   面積    収穫率   生産量  
      (1000ha)(kg/ha)(1000トン)(1000ha)(kg/ha)(1000トン)
クラス1      188      5200      978         202      3500      707            1685
クラス2      195      3300      644         198      2800      554            1198
クラス3      197      2650      522         229      2200      504            1026
小 計        580      3700     2144         629      2800     1765            3909
3万ヘク
タールで
の損失生
産量(1)               (2700)     (81)

合 計        580      3560     2063         629      2800     1765            3828
精米換算                        1341                           1765            3106

二毛作の
小麦・大
麦生産量                                                                        375

総 計(2)                                                                      3481

  (1) 稲の作付総面積(580000万ヘクタール)のうち、30000ヘクタールでは収
  穫物が損傷した。550000ヘクタールについては3700kg/haの平均収穫率が適用
  されるが、損傷をうけた30000ヘクタールからは、わずかに1000kg/haの収穫
  率しか実現されえなかったと想定される。30000ヘクタールの損傷した作物に
  ついて調整したのち、稲の生産量は2063000トン、精米milled riceで
  1341000トンに相当する量と見積られた。
  (2) 精米換算を含む。

見積られた3560kg/haという稲の平均収穫率は、1997年(3.90トン/ha)の数
字よりかなり低い。1998年における低い収穫率の主な原因は、化学肥料の決
定的な不足をはじめ、利用できる投入物が減ったことにある。しかし、肥料供給
における国際的支援、有機肥料投入を増大させようという政府の努力、きわめて
集約的な作付けと労働の一層の投入、それに良好な天候にもたすけられ、こうし
たことが、1998年に平均収穫率がさらに落ち込むのをくいとめた。トウモロ
コシの場合、IFADプロジェクトはいかなる肥料も供給していないが、政府による
供給がいくぶんなされた。投入面での改善がないのに、トウモロコシの平均収穫
率が、干ばつで落ち込んだ1997年の1750kg/haから1998年の2800kg/haに
回復するのに寄与したのは、実際のところ、集約的な作付けに加えて、主に良好
な天候であった。けれども1998年のトウモロコシの平均収穫率は、1995
−96年(3530kg/ha)の平均水準よりかなり低いままである。

3.8.二毛作計画

二毛作計画は、1996年に国連機関と朝鮮民主主義人民共和国政府とが合同し
て開始され、1997年に実施された。耕作をふやすために土地を拡張するとい
う可能性がきわめて限られている点を考慮すると、それは食糧生産の増大化にと
って1つの重要なイニシャティヴだった。計画は当初、春作物の大麦生産ではじ
められ、その後、1998年に秋・冬作物の小麦と大麦の耕作も行なうよう拡張
された。二毛作計画の主要な目的は、6月以降の稲とトウモロコシの耕作に先立
って、10月から6月までのあいだに追加の穀物生産を行なうため農地を利用す
ることである。1997年と1998年の二毛作計画の結果は、概してうまくい
き、1999年にはジャガイモ、豆類、それに野菜栽培によって作物を多様化さ
せられるよう、この計画が拡張される予定である。

二毛作面積は1997年の3万8000ヘクタールから1998年の7万ヘクター
ルへ増加した。1998年の秋・冬作物の小麦と大麦の生産の目標は、10万ヘ
クタールである。さらに、1999年の春と夏のための二毛作・作物多様化計画
は、5万ヘクタールの大麦・小麦生産、2万ヘクタールの米、6万ヘクタールの
トウモロコシの耕作による穀物増産を含んだ計画である。1998−99年の二
毛作計画におけるこれら目標の達成は、適切で、タイムリーな贈与側の支援に決
定的に依存しているだろう。

調査団は、二毛作、作物多様化をつうじて耕地の作付けパターンを集約化し、多
様化するためのこの二毛作・作物多様化計画を大いに支持するものである。それ
は、朝鮮民主主義人民共和国における農業復興と持続した開発のための計画全体
の一部としてである。

3.9.その他の食用作物

近年、穀物の生産量とその入手量が劇的に減少したので、朝鮮民主主義人民共和
国の食糧経済における他の食用作物の重要性が増した。ジャガイモと野菜が特に
重視されたが、大豆やサツマイモもまた栽培されている。

調査団は、近年、世帯の食糧確保に役立てようと、各家庭の庭畑がこれら作物を
ますます集約的に栽培するよう利用されているのを見出した。各世帯はまた、農
民市場に出すことができる余分の野菜を売っている。

3.10.家畜

家畜部門にたいする政府の現在の一般的な政策は、飼料に穀物が必要な単胃動物
を減らさせ、反芻動物の家畜、特にヤギを奨励している。ヤギの場合のさらなる
利点は、ヤギが、作物を生産できる見込みのあまりない丘陵地帯の斜面にはえる
牧草を餌にするからである。

間違いなく、近年、家畜数はかなり減少した。それは主に飼料に使える穀物不足
のためである。政府の推計によれば、1996年と1997年とのあいだに、同
国の家畜数は、ヤギをのぞいてあらゆる種類で著しく落ち込んだ。朝鮮民主主義
人民共和国政府により提示されたさまざまな種類ごとの家畜数のその2年間につ
いてのデータは、表4に転載されている。1998年についてのデータは利用で
きないが、調査団のフィールド調査における観察では、ヤギの数はいっそう著し
く増えているようであり、単胃動物の数はいっそう減っているようである。

表4:朝鮮民主主義人民共和国の家畜、1996年と1997年

            1996    1997    変動 %
牡牛       615000   545000    -11.4
乳牛        14000      −       −
豚        2674000  1859000    -30.5
羊         248000   160000    -35.5
ヤギ       712000  1077000     51.3
ウサギ    3056000  2740000    -10.4
鶏        8871000  7547000    -14.9
カモ      1098000   822000    -25.1
ガチョウ   554000   357000    -35.6

飼料が不足しているため、家畜はわずかな量の穀物とトウモロコシの穂軸とか茎
とか葉のような副産物の餌をあたえられている。しかし、たとえば豚や牽引用の
動物については、繁殖力productive stockと活力源energy reservesを維持させる
ためにいくぶんかの穀物を含んだより良い飼料を必要とする。政府は目下、農業
機械化の崩壊の結果をやわらげるため、役畜(たとえば牡牛)の利用増加を奨励
している。役畜の牽引力がますます農作業にとって重要となっているので、より
高い活力を生む穀物のいくらかの供給はそれら役畜にも必要である。

家禽はほとんど穀物飼料に依存しているが、調査団は、1998年には前回訪問
時のとき以上に、各世帯が数羽の鶏やウサギを飼育しているのを見出した。それ
は、食事におけるたんぱく質源を増やすためでもあり、農民市場でそれらを売っ
て、別の必需品を買うためでもある。


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