Re: 栄養調査データの見方


記事番号:5710 (1999年02月14日 00時46分29秒)
投稿者:李修二 (属性:在日小おやじ)
 メールアドレス:s-lee@na.rim.or.jp
 ホームページ:http://www.han.org/a/leesooi.html

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内容

在日メーリングリスト投稿記事の転載です。

−−−−−ここから−−−−−

統計学の専門家にアドバイスしてもらいながら、報告書のデータの意味について
ちょっと解説を書いてみました。

参考にしていただければ幸いです。


> 主な調査結果
> 
> 表1は、調査された子どもたちの年齢別、性別の分布を示している。女の子と男
> の子がほぼ等しくそれらサンプルで代表されている。
> 
> 全体的な栄養失調罹患率は、算出された3つの指標それぞれで表2に示されてい
> る。むくみを伴った約3パーセントを含む、およそ16パーセントが、軽度およ
> び重度の衰弱、言い換えれば、急性の栄養失調に冒されている。調査されたあら
> ゆる子どもたちの約62パーセントは、軽度および重度の発育不全、言い換えれ
> ば、慢性的な栄養失調に冒されている。一方、およそ61パーセントは、軽度お
> よび重度の体重不足の罹患、言い換えれば、年齢のわりに過少体重であった。
> 
> 栄養失調罹患率の年齢別、性別の分布が表3に示されているが、そこから、12
> ヵ月から35ヵ月の年齢範囲で衰弱の罹患率が最多となっており、その前後はよ
> り少ないことが見てとれる。他方、発育不全と過少体重は4歳までずっと増え続
> け、それ以後の年齢も低減しない傾向にある。データはまた、3つの指標すべて
> で判断された栄養失調の罹患率は、女の子よりも男の子の間でのほうがより大き
> いという傾向があることを示している。年齢別体重と年齢別身長の分布は標準的
> なパターンを示しているとはいえ、それらのZスコアの平均値はきわめて悲観的な
> ものであり、子どもたちの人口全体が危機にさらされているらしいということを
> 告発している。
> 
> 
> 表1:サンプルの年齢および性別の構成
> ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
>    年齢層      男子 構成比(%)  女子 構成比(%)  総計 構成比(%)
> 6ヵ月〜12ヵ月未満     61   6.9       83     9.5         144     8.2
> 12ヵ月〜24ヵ月未満    146    16.5      151    17.3       297    16.9
> 24ヵ月〜36ヵ月未満    159    17.9      133    15.2       292    16.5
> 36ヵ月〜48ヵ月未満    139    15.7      125    14.3       264    15.0
> 48ヵ月〜60ヵ月未満    141    15.9      125    14.3       266    15.1
> 60ヵ月〜84ヵ月      241    27.2      258    29.5       499    28.3
>    総 計       887   100        875   100        1762   100
> 
> 
> 表2:全体的な栄養失調罹患率
> ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
>              栄養失調の割合(%)       Zスコア
>              マイナス2Z以下    平均値   95%信頼区間
> 衰  弱(体重/身長)        15.6               -0.95     -1.03 〜 -0.87
> 発育不全(身長/年齢)        62.3               -2.57     -2.73 〜 -2.45
> 過少体重(体重/年齢)        60.6               -2.29     -2.44 〜 -2.20
> 
> 
> 表3:年齢別、性別の軽度および重度の栄養失調罹患率
> ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
>              男子(%)      女子(%)      総計(%)
>            衰弱(体重/身長がマイナス2Z以下)
>   年齢層
> 6ヵ月〜12ヵ月未満         19.1                16.5                17.6
> 12ヵ月〜24ヵ月未満         36.5                25.8                30.9
> 24ヵ月〜36ヵ月未満         25.3                14.2                20.5
> 36ヵ月〜48ヵ月未満         16.3                 9.2                13.4
> 48ヵ月〜60ヵ月未満         14.6                 3.0                 8.9
> 60ヵ月〜84ヵ月             11.7                 4.2                 7.8
> ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
>            発育不全(身長/年齢がマイナス2Z以下)
>   年齢層
> 6ヵ月〜12ヵ月未満         23.0                 8.2                14.5
> 12ヵ月〜24ヵ月未満         45.6                51.1                48.5
> 24ヵ月〜36ヵ月未満         63.7                60.2                62.2
> 36ヵ月〜48ヵ月未満         74.6                75.6                75.1
> 48ヵ月〜60ヵ月未満         80.0                75.0                77.5
> 60ヵ月〜84ヵ月             76.4                73.4                74.8
> ――――――――――――――――――――――――――――――――――――
>            過少体重(体重/年齢がマイナス2Z以下)
>   年齢層
> 6ヵ月〜12ヵ月未満         46.7                21.6                32.2
> 12ヵ月〜24ヵ月未満         63.1                49.4                56.1
> 24ヵ月〜36ヵ月未満         72.1                61.5                67.3
> 36ヵ月〜48ヵ月未満         69.1                70.3                69.7
> 48ヵ月〜60ヵ月未満         66.6                56.6                61.9
> 60ヵ月〜84ヵ月             70.1                59.7                64.7
> 
> −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


************************************

Zスコア(Z得点、標準化得点)について

一般にZスコアとは、特定の式を用いて、ある変数(たとえばクラスの数学の点
数)を平均ゼロ、標準偏差1に加工した値のことをいいます。Zスコアというと
なじみは薄いでしょうが、学業成績をあらわすときによく使われる「偏差値」と
いうのも、このZスコアを加工(平均を50、標準偏差を10にする)したもの
です。

下の図1のように、平均値を中心としてデータが対称に分布しているとき、それ
らのデータは、Zスコアが−1から+1までのあいだに全体の約70%、−2か
ら+2までのあいだに約95%が含まれることが知られています(図2参照)。

分布が平均から対称ではないときこれらの値は変わってきますが、身長や体重は
平均から対称に分布することが知られています。

そこで栄養調査報告書の説明にうつりましょう。

「人体測定学的指標が、Zスコアで−2以下となる子どもたちが、軽度または重
度の栄養失調と見なされた」

Zスコア−2以下は、データの分布の下位2.5%以内ということになります。
したがってこれは、“もし北朝鮮の子どもたちが普通に食事を取って成長してい
れば、95%くらいの子どもたちがその中に入っていただろうと推定される年齢
別の身長や体重の範囲”よりも、身長や体重が少ない子どもを栄養失調と判定し
た、ということになります。

そして、表2、3によると北朝鮮の子どもたちのおよそ6割、年齢や性別によっ
ては8割もの子どもが栄養失調だということですので、ちょうど図3のような分
布をしているということになります。

なお、表2におけるZスコアの最小平均値は−2.57ですが、これは全体の下
位0.5%、つまり正常であれば千人のうち5人しかいないほどの栄養不良状態
が、北朝鮮の子どもたちの平均ということです。

こうした状況は、いろいろな報道でふれられているように一口に言って、子ども
たちが皆、歳の割に小さく見えるということなのでしょうが、こうした子どもた
ちが今後、成長を回復できるのか、病気などに負けずに順調に育つのか、非常に
心配なところです。さらに、今回調査では調べられていない7歳以上の子どもた
ちも当然、似たような状況なのだろうと推測されます。


           図1
                 ○
               ○ ○○
               ○○○○ ○
              ○○○○○○○
             ○○○○○○○○ ○ 
            ○○○○○○○○○○○○
          ○ ○○○○○○○○○○○○○
          ○○○○○○○○○○○○○○○
         ○○○○○○○○○○○○○○○○○○
      ○ ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
      ────────────────────────
                 ↑
                 平均

           図2        Zスコア(身長・体重)

                           ・・
                       ・ ・ ・・
                    ・  ・・・・・・ ・・
                   ・・ ・・・・・・・・・・・ ・
                 ・ ・・ ・・・・・・・・・・・ ・ 
              ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
                ┌────┬────┬────┬────┐
                −2      −1       0        1        2
                         Zスコア
           図3

              ・・
          ・ ・ ・・
       ・  ・・・・・・ ・・
      ・・ ・・・・・・・・・・・ ・
    ・ ・・ ・・・・・・・・・・・ ・ 
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ┬────┬────┬────┬────┬────┬────┬
 −5      −4      −3      −2      −1       0        1


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