北朝鮮についてのFAO/WFP報告書(99年6月)1


記事番号:2374 (1999年07月20日 23時19分26秒)
投稿者:李修二 (属性:在日韓朝鮮人)
 メールアドレス:s-lee@na.rim.or.jp
 ホームページ:http://www.na.rim.or.jp/~s-lee/N_Korea_aid.htm

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内容

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  この投稿は、朝鮮民主主義人民共和国における食糧難問題について、まった
 く不十分な日本のマスコミ報道をおぎない、もっとも信頼できると思われる情
 報を紹介することを目的としています。
  そこで、さまざまな政治的評価を別にして、純粋に人道的な観点から私たち
 にいったい何ができるかを考えてゆくうえで多少とも参考にしていただければ
 さいわいです。
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SPECIAL REPORT
FAO/WFP CROP AND FOOD SUPPLY ASSESSMENT MISSION TO THE DEMOCRATIC
PEOPLE'S REPUBLIC OF KOREA

特別報告書
食糧農業機構および世界食糧計画による朝鮮民主主義人民共和国における作物
および食糧供給に関する調査団

http://wwwnotes.reliefweb.int/files/rwdomino.nsf/480fa8736b88bbc3c12564f6004c8ad5/decc93ae47c9b8ac8525679f006d1205?OpenDocument

1999年6月29日

1. 概観

農業部門をまひさせた1995年から1997年までの自然災害と、食糧や主要原料やエ
ネルギーを輸入するための国力を損なわせた1990年代はじめ以来の深刻な経済的
低迷とが結びつき、朝鮮民主主義人民共和国における食糧安全保障はいちじるし
く掘り崩された。農業における詳細な計画と集中的な管理とで慢性的な食糧問題
に対処しようとした同国の努力は、不運にも、問題の規模とその根本的な原因の
点から見て長期的な利益を制約してきてしまった。国内での食糧生産に向けられ
た非常に高い水準の強調と配慮にもかかわらず、農地の不足と、農業部門が大い
に依存してきた肥料や農業機械や灌漑について、その量や動力エネルギーが不足
しているため、農業生産力は依然としてきわめて押さえ込まれたままであり、そ
のため、今年の食糧産出高は、楽観的な天候シナリオのもとでさえ、なお必要量
をかなり下回ったままであろう。問題の規模と深刻さの点から見て、また同国が
より高められた食糧安全保障を得るのを助けるために、国際的な支援をともなっ
た短期的および長期的な方策の両者が求められつづけている。差し迫った必要を
充たす進行中の緊急食糧援助にくわえて、長期的な食糧安全保障を確保する農業
の復興と再生への国際的支援が行われることが必須である。

同国の食糧供給についての継続した関心のゆえに、そしてまた、同国が端境期に
入ったために、食糧農業機構(FAO)と世界食糧計画(WFP)の合同の作物と食糧
供給に関する調査団が、昨年10月、いちばんの収穫期に行ったその時の査定を再
吟味するために、6月1日から8日まで朝鮮民主主義人民共和国に派遣された。査定
実施に際しての調査団の調査結果は、政府省庁および同国に駐在する国連および
二国間機関、それにNGO諸団体との意見交換、それと、選ばれた地域への現地訪問
とに基づいたものである。この場合、限られた時間の中で現地訪問は、ナンポ、
平安南道、黄海南道および北道の4つの地域へ行なったが、そのうち後の3つの
道は主要農業地域であり、同国の南西部、穀倉地帯に位置している。食糧作物状
態の査定にくわえて、人々の消費パターンや対処策を調べるために、多くの農家
や工業労働者世帯への訪問も行われた。

調査団は、先の調査で提起された懸念、特に低下しつつある栄養水準に関する懸
念を繰り返し述べるものである。大規模な食糧不足が人口全体の慢性的な栄養問
題に帰結し、それは取り返しのつかない長期的な所産をもたらしうるものである。
昨年の栄養調査は、調査対象の子どもたちのおよそ62%が軽度から重度の発育不
良であり、軽度から重度の過少体重、つまり年齢の割に少ない体重の子の罹患率
はおよそ61%だったことを示した。また広範に観察された衰弱した子どもは栄養
補充食により減らすことはできたものの、現在の栄養的治療活動にもかかわらず、
発育不良の罹患率は依然として高いようである。1998年の栄養調査は貴重な識見
を提供したが、なお栄養問題の範囲と程度をさらに確認し、特別な治療活動の目
標を正確に定めることが必要である。この点から、調査団はより包括的な栄養調
査の必要性を強調するものである。

食糧問題は慢性化しているので、これまでの食糧援助の主要な構成部分だった穀
物にくわえて、栄養不足に対処するため、アミノ酸、脂肪酸、あるいは微量栄養
素を与える食糧が含められることが益々重要になりつつある。それゆえ、国際的
食糧援助が食用油やたんぱく質の含有量の多い食糧を含むようさらに多様化され
ることがぜひとも必要である。

調査団はまた、食糧消費におけるかなりの違いを観察した。国際的な食糧援助お
よび(または)農業支援を受けている諸家庭のような住民のある集団は、山岳地
帯の人々や特に非農業地帯の工業労働者諸家庭に比べて、食糧不足に対処するう
えでより良い立場にある。後者のような集団の生産活動からの収入はここ何年か
減少し、これらの人々は有効な対処策にほとんど頼れない。そうした諸家庭の場
合、これまでほとんどまったく公共配給制度からの配給分に依存していた。1999
年4月に食糧配給は停止したので、これらの人々は栄養価が限られた代用食品に頼
らなければならなくなった。さらに、これらの集団が農民市場で食糧を調達する
力はきわめて制約されている。なぜなら、これらの人々は非農業地帯に居住して
おり、そして(または)、食料の十分な量を得るには限られた資力しか持たない
からである。こうした相違を考慮して、調査団は、工業地帯で、また限られた農
業しかない同国北東部地域の住民の栄養状態に重大な懸念を表明するものである。
こうした懸念に対して、WFPは、北東部でのより多くの受益者に目標を定め、これ
ら地域での分配分、受益者の範囲、それに「労働のための食糧」プログラムを増
加させることで対応しているが、将来の目標設定では、地理的、人口統計的要因
を反映させるようさらに改善される必要がある。

昨年10月の調査団によって行われた1998年のコメとトウモロコシの生産高見積り
に基づき、それに、今年の二毛作からの大麦、小麦、ジャガイモの生産を考慮し
て、1998−99農業年の穀物入手量は、当初見積りを9%上回る378万トンに修正さ
れた。[ジャガイモ生産については種子用および廃棄見込み量を除き、穀物(エネ
ルギー)換算で。]これに対して、食糧、飼料、それに他の用途(種子や廃棄)を
含めた利用必要量は482万3,000トンと査定され、これは今年、100万4,000トンの
輸入量の必要を示す。このうち、同商業年における商業輸入量は30万トンで不変
であろうと見積もられる。すでに配送済み、または輸送中の食糧援助輸入量は64
万2,000トン以上にのぼっている。ここから、不足している輸入必要量はおよそ9
万8,000トンとなる。

2. 1999年作物生産についての早期見通し

近年の慢性的な肥料、エネルギーの制約にくわえ、食糧生産のために利用できる
農地の面積と、どうしても主に年一農業シーズンだけに同国を制限する気候とに
よって、朝鮮民主主義人民共和国の農業はもともと制約されている。その農業シー
ズンはおおむね霜の降りない5月から10月までの150日間から180日間に及び、その
間、6月から8月にわたる3ヶ月間にほとんどの降雨がある。実際、これら3ヶ月間
の降雨の良し悪しがきわめて重要であろう。なぜなら、それは、作物にもたらす
効果のためばかりでなく、近年の自然災害(洪水や干ばつ)もまた、これらの月
に起こっているからである。降雨量の不均等な分布と不確実性のために灌漑を必
要とさせるが、もっとも近年同様、今年も、深刻なエネルギー不足により、電気
ポンプ汲み出しに依存する多くの揚水灌漑システムの運転が制限されるだろう。

短い栽培シーズンと早霜のリスクのため、田植えやトウモロコシの植え替え、そ
れに可能な地域では冬まき穀物の植付けのような重要な農作業は、注意深いタイ
ミングが求められる。経営に関して、作物耕作のレベルは非常に高水準であり、
国内食糧生産を最大化するための政府と農業従事者たちによる徹底的な努力を反
映していることを調査団は観察した。食糧生産を引き上げるために政府によって
とられたその他の方法には以下のような事柄が含まれる。(1)開発計画における農
業優先、(2)資源、特にエネルギーの割り当てにおける食糧生産の優先、(3)農業
復興・環境保護計画(AREP)、二毛作、「労働のための食糧」計画のようなプロ
グラムを通じての食糧生産引き上げ、および、環境破壊低減のための適切な計画
を練り上げるうえでの国連や欧州連合のような他の国際機関との密接な共同事業、
(4)例えば今年のジャガイモのような、穀類単作の悪影響を減らすためのかなりの
作物多角化の導入、(5)肥料の一層の効果を考慮したコメの新品種開発、(6)化学
肥料依存を減らすための微生物肥料使用の増進、そして、(7)飼料用穀物利用を減
らすための広範な小家畜飼育体制の奨励である。これらのうち、最後の事柄に関
して、以前には集中的に飼育され、穀物を要した牛のような大型の家畜がかなり
減少した結果、ヤギやカモの畜産が特に奨励されている。調査団はまた、観察さ
れた反芻動物は栄養状態がひどく悪いように見えたことに注目した。それゆえ、
国際的な介入と共に国内的諸措置もまた、人々の苦難の規模を小さくするのにき
わめて重要であった。

土壌の質はやせており(ph5〜7、有機物 0.5%)、また単作でもあるため、同一
水準の産出高を得るには益々多くの肥料投入を必要とする。さらに有機肥料の使
用が大いに強調されており、それは長期的に有効な効果を持つものの、現在の土
壌の状態と作物の必要を前提とすれば、その全体的な効果は制限されている。丘
陵地での土壌浸食のリスクは大きく、(必死の食糧生産の必要からの)耕作継続
や増加しているヤギの飼葉あさりで問題はいっそう悪化しうると注意をうながす
観察者もいる。

平均的な気候条件および主要な作付けパターンの概要は、下の表1に示される。

(表1. 作物こよみと農業気候パターン)[←原文参照]

2.1. 降雨量

エルニーニョおよびラリーナ現象の地域への気象効果によって特徴づけられる近
年の間、主要農業シーズン前の準備期の降雨量は不規則であり、平年以下であっ
た。1月から5月までの間の平均以下の降雨量は、6月初めから8月の雨季の終わり
までの降雨量ほど主要な農業シーズン作物に影響を与えないものの、大麦、小麦
の二毛作作物にとっての土壌中の水分量に悪影響を及ぼし、それは昨年の調査団
が想定した収穫率に比べ、いくぶん収穫率が低減する結果になろう。[降雨量の
推移についての]図1を参照のこと。

(図1. 長期平均に対比させた1999年の降雨量)[←原文参照]

2.2. 肥料

慣行とされてきた集約農業システムは、穀物中心の生産の継続を必要とするもの
だが、それは土壌から自然の栄養物を著しく枯渇させる。休閑させたり、マメ科
植物のような土壌の肥沃度を高める代替作物を植えたりして、土壌を十分に「休
ませる」こともなかった。天然肥料も適用されているが、もしそれが(減らされ
た量の)化学肥料と、作物栄養体系に統合された輪作と共に用いられたならば、
より有効であっただろう。けれども、そうした農業システムは本質的に長期的方
策であり、同国の資源基盤とその特別な必要とに合致させてさらに発達させる必
要がある。当面の食糧の必要を充たすには、同国は依然、化学肥料にきわめて依
存しつづけるし、その生産と輸入は経済的制約のため著しく減退している。実際、
二毛作は追加的な食糧生産を可能とさせるが、後作のトウモロコシやコメによる
肥料需要はより大きくなり、より多く肥料の必要の度を増させるである。

土壌分析についての正確なデータがないので、調査団は農業委員会から提供され
た情報による肥料必要量見積りを基にする。同委員会は、窒素、リン、カリウム
(NPK)の栄養物からなるおよそ70万トンが年間肥料必要量と見積もる。今年、政
府は利用可能量を以下のように見積もっている。

・配分済み: 硫酸アンモニウム29万8,000トン、過重燐酸石灰7万9,000トン、塩
 化カリウム2万7,000トン

・輸入輸送中: 硫酸アンモニウム28万トン、過重燐酸石灰1万トン、塩化カリウ
 ム5,000トン

栄養物量ベースでは配分済みおよび輸送中の肥料の量は、窒素13万3,000トン、リ
ン1万6,000トン、カリウム1万4,000トンとなり、総計16万3,000トンのNPKとなる。
これは1997年、1998年に比べると、わずかに利用可能量が増えたことを示すが、
農業委員会見積りの年間必要量のおよそ4分の1程度に過ぎない。とはいえ、調査
団は、時期は不定であるものの二国間交渉により、さらに20万トンの不特定の肥
料が朝鮮民主主義人民共和国へ供与される交渉が水面下で行われていることをほ
のめかすニュース報道があったことに注意した。農業委員会はそのような交渉に
ついて知っておらず、前記予想では肥料総量に含めなかった。図2は、1989年以来
のNPK使用の相対的減少の様子を示している。

政府はまた、1999年のトウモロコシ耕作面積が1998年の約62万9,000ヘクタールか
ら49万6,000ヘクタールへとかなり減少したと報告している。示されたその主要な
理由は、トウモロコシ収穫率の貧弱な耕地でのジャガイモ栽培への大規模なシフ
トであり、それは以前の平均約4万ヘクタールから今年の17万ヘクタールへと増加
した。しかし、調査団はさらに説明を求めた。というのも、観察されたジャガイ
モのほとんどはトウモロコシと組み合わせて耕作されており、ジャガイモが6月半
ばと後半に収穫された後、トウモロコシがなおその区画で耕作されうるからであ
る。この状況は、9月から10月にかけて予定されている次回調査時に再吟味される
だろう。虫害と病害については、ジャガイモの胴枯れ病のリスクはまだ存在する
ものの、今シーズン、これまでのところ重要な問題とはなっていない。けれども
一般に、作物の成長のこの段階での胴枯れ病は、収穫に重大な影響を及ぼすよう
には見られない。

(図2. 1989年から1999年までの朝鮮民主主義人民共和国におけるNPK肥料の使用)
 [↑原文参照]

3. 1999年における二毛作計画とジャガイモ

食糧産出を拡大する限られた余地を考慮して、国内食糧生産を増大させる試みと
して、冬まき小麦と春まき大麦の二毛作を発展させるための国連機関と政府によ
る合同計画が1996年に導入された。同計画の目的は、冬の雪解けが始まる3月初め
から、稲とトウモロコシの夏の植付けが完了される必要のある5月、6月までの間
の期間を最適に利用することである。計画は当初、春まき大麦の生産のために開
始され、続いて1998年に秋まき・冬まきの小麦、大麦の耕作も含むよう拡張され
た。1997年と1998年の計画の成果は一般に良好であり、その結果、二毛作耕作面
積は1999年には主にジャガイモと多少の豆類、野菜類とによる作物多角化を含む
よう拡張された。これら作物にくわえて、輪作での、あるいは、混合作物として
のマメ科植物は、肥料不足と土壌が比較的やせている点から見て特に好都合であ
るように思われる。

3.1. 春まき大麦

1999年計画のため、春まき大麦の種子、計3,000トン(レッドサン3)、NPK肥料2,268
トン、尿素5,035トンが国連機関合同要請のもとで供与された。それら投入物の総
費用はおよそ190万ドルであった。

供給されたそれらの種子は良質であり、肥料の配送で一部遅れがあったものの、
おおむね時期に間に合った。同計画は10の道の400ヵ所の協同農場の2万3,300ヘク
タールで着手された。燃料の、ゆえに灌漑の制約のため、作物はほとんどまった
く降雨に依存させた。概して1998−99年の冬は温暖で、春は平年より湿気が少な
かった。それゆえ、昨年の調査団による計画水準に比べ産出高の若干の減退があ
った。5月末まで病害やヨトウムシのいかなる重大な発生も報告されていない。ヘ
クタール当たり2.0トンの平均収穫率で、計4万6,600トンの大麦が同国で生産され
るものと期待される。FAOが支援する大麦耕作プロジェクトそれ自体は同国の大麦
栽培面積全体のおよそ44%になる。さらに政府は現地資源から大麦種子1,660トン
を92ヵ所の協同農場に植えるよう供給し、プロジェクトはただ肥料だけを提供し
た。それゆえ、1999年の春まき大麦の耕作総面積は5万2,860ヘクタールであり、
およそ10万6,000トンをもたらすと見積もられる。表2は、その内訳を示している。

表2. 1999年の大麦耕作面積と生産
     [援助者]       [種子供給量]  [作付け見積り面積]  [見積り生産量]
                  (トン)        (ha)     (ha当たり2.0トン)
ノルウェー+スウェーデン+WFP       3,000              15,000              30,000
FAO+朝鮮民主主義人民共和国         1,660               8,300              16,600
国連開発計画                          837               4,185               8,370
欧州連合(DG8)+教会合同行動(ACT)     650               3,250               6,500
欧州連合(DG8)+スイス                155                 775               1,550
現地資源                            4,270              21,350              42,700
 総 計               10,572              52,860             105,720
[出所:各種機関]

3.2. 冬まき小麦

冬まき小麦はおよそ6万2,900ヘクタールで植え付けられ、ヘクタール当たり平均3
トンの収穫率が見積もられ、18万8,700トンの総生産が得られる見込みである。

3.3. ジャガイモ

食糧不足に対処するため、政府は今年、国際支援を受けてジャガイモ耕作を強力
に推進した。その結果、過去の年の平均約4万ヘクタールに比べ、約17万ヘクター
ルに植え付けられた。不充分な肥料と灌漑、それにまずい播種方法のため、平均
収穫率はヘクタール当たり約10トンと見積もられ、全体でおよそ170万トンをもた
らすと見込まれる。

(つづく)

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